ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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28 学園祭準備 side 陸

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扉の小窓も含めた教室の窓全てに、カーテンやダンボールで目隠しするクラスが多い中で、ここはオープンにして話題性を振りまき当日の集客を狙っているようだ。
誉には生徒会役員として巡回時間もあるし、それとぶつからねぇように午前と午後に二回公演するみてぇだな。
食べ物の行列や来校者が増えてく時間帯に、松野に相談したあとで手を挙げていたのはこのためか。

廊下に貼られている告知ポスターは、シンプルにタイトルと時間、先行チケット抽選会の知らせが書かれている。
わざわざ顔を晒さなくても、十分コレでいけんだろう。

教室を覗くと、こっち側にいた外野の視線も、俺と空の声も気にならなかったのか、中では練習が順調に進んでいた。
教室の中央で、制服姿の誉と凛が向かい合って演じているのをぐるりと他の生徒が取り囲んでいる。

台本と見比べたり、ストップウォッチを手にしてんのは裏方か?
二人のやり取りに割り込んでいった女子生徒の中に、海がいた。
『ロミオとジュリエットがいっぱい』のタイトルからすると、海もジュリエットなのか?
げぇー、ヒロインって柄かよ。
何人もいるうちの一人だとしても、似合わねぇだろう。
まぁ、現代版のパロディらしいから、後追いするジュリエットそのままじゃないんだろうが。

問題なさそうだなと、他を見に行くのに踵を返そうとしたら。
窓際で台本から顔を上げたヤツと目が合った。
会釈でもしてくるかと思ったが、俺に驚いて僅かに身体が仰け反った後、台本を他の生徒に渡してこっちに歩いてくる。

・・・なんだ?
絡んでくるつもりか?

自然と目を細め、相手の一挙一動に目を凝らす。
他の生徒に用事があるようには見えねぇな。
桂木の目は、俺から一秒も外れない。

わざわざ菊川に許可を入れてまで、三枝にちょっかいをかけてきたα。
特異型でもねぇのに、本気で同性のβに惚れてるなんて理解し難いと思っていたんだが。
今は、三枝に手玉に獲られるとわかっているからな。
情けないαだと、そう感じるはずだった。

けど。

桂木が、強張った顔で俺に向かって真っ直ぐ歩いてくる。
格上の俺相手に、目を逸らさず。
一歩一歩近づいてくる姿と、桂木が息を殺して警戒しているピリピリ張り詰めた空気が気に障る。
なんか用かと対応する前に、コイツを圧倒して、格の差を見せつけてやらなくてはと淀んだ狩りへの闘争心に火が灯る。

誉のように、生理的に合わねぇとかじゃねぇな。
いつからなんてわからねぇが、俺はコイツをよっぽどいけ好かないと思っていたらしい。
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