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27 学園祭準備

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「カナ、半分貰おうか?」

「ニャア・・・あ"」


翌朝の屋敷。
机の上に次々運ばれてくるお皿を前に、思わず鳴いてしまった口を掌で隠す。
し、しまったっ
押さえたら逆に目立つっ
と、言うか、自然に出てたーーーっっ


「ん、ニャア?」


向かいに座っていた陽太さんが、フォークを片手に首を傾げてるが・・・どう答えたら良いんだ? 
焦って咄嗟に言葉が出てこない俺に、皿の料理を移動させていたヤマが助け船を出してくれた。


「学園祭で、長靴を履いた猫をモチーフにしたコスプレをするから、その練習をしてるんだ」

「へぇ、奏ちゃんの猫は可愛いだろうな。
倭人は・・・どうなんだ?」

「俺は、粉引き職人の息子だから猫じゃない」

「猫と粉引き職人???
変な組み合わせだな」


う、嘘じゃないが、よくサラッと答えられるな!
全く取り乱さずに長靴を履いた猫のあらすじを説明しているヤマを盗み見たら、余裕の微笑みで返されついでのように切り分けたソーセージを口に入れられた。
何も食べていないのを気遣ってくれたんだろう。

モグモグ、咀嚼。
んー、このソーセージは疲れが残る身体には重いな。
全部ヤマに食べてもらって、シリアルを少し食べておこうか・・・

昨夜は、俺にだけ「ニャア」しか言わないルールを適用され、待ちわびたヤマを受け入れたときは意識しなくても「ニャア」としか鳴けなくなるくらいまで慣らされていた。
「気持ちいい?」と、後孔を指でかき混ぜられても「ニャアゥ!(それより他の!)」で。
「猫だから」と、バックで強引に腰を振られても「ニャアーン、ニャアーン(もっと、もっと)」で。

ヤマは、同じ「ニャア」でもニュアンスを察してくれていたからなんの不自由もなかったし。
そう言えば、朝の起き抜けに「ニャァア"・・・(昨日は凄かった・・・)」と呟いていたような気もする。
馴染みすぎだ!


「へぇ、面白そうだなあ。
学校には縁がなかったからなぁ。
俺も行ってみたいが、ぜってぇ澪に反対されるしなぁ」

「倭人君と奏ちゃんの学校は、生徒以外も入れるの?」


ヤマと清人さんの影に隠れて見えない遥馬さんが興味をもたれたみたいだ。
ヤマは、「入れる」と返して日時やクラスで何をするかまで具体的に話しているが。
大丈夫、なのか?
遥馬さんのうきうきした気配を感じるんだが??

もし、万一、遥馬さんが参加したいと言ってこられたらどうするつもりなんだ??
絶対に、清人さんもついてくるぞ!

ーーー騒動にしかならない予感。

一通り説明を受けた遥馬さんは、パンッと軽快に手を鳴らした。


「凄いなぁ。
俺の通っていた高校と随分違うんだね。
ねぇ、清人。
Ωも受け入れてる学校だったら、俺が行っても大丈夫だろうし、一緒に行こう?」

「お、いーじゃん、ハルちゃん。
気分転換に、行ってきたら?
息抜きしてないと、ストレス溜まるしなぁ」


焚き付けるような陽太さんの言葉に、それまで我関せずと黙々食べていた清人さんの手が止まり。
同時に、ヤマが「ヒェッ」と息を飲んで凍りついた。
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