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27 学園祭準備

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俺が椅子から立ち上がると、ドライヤーを台に置いたヤマが交代して座った。
後ろ手に髪をまとめていたゴムに指を引っ掻けて解く。
濡れて色濃く見える茶髪が、ハラハラと流れ落ちた。

俺はヤマの正面にまわって、肩にかかっていたタオルを手に取り髪の水気を優しく拭き取る。
ヤマが頭を拭きやすいように下げてくれるので、背面より正面の方が拭きやすいんだ。
洗面台とヤマの間に距離はそんなにないけど、ヤマの足に挟まれて立つことに息苦しいとか狭いとか感じたことはない。

ヤマの髪はサラサラストレート。
癖っ毛の俺と違って、とても拭きやすい。
俺の髪を乾かしている間に首筋に流れてしまった分もあるから、タオルドライだけでほとんど乾いてしまうんだよな。

腕を伸ばして、首筋にタオルを当てていたら、ジッと俺を見上げるヤマと目が合う。


「どうかしたか?」

「カナ、邪魔しないように気を付けるから、腰に手を回してもいい?」


見下ろすと、ヤマの広げられた両腕が俺を挟み、今か今かと俺の許しを待っていた。
本当に、バカだな。


「俺が断ると思うか?」


額に軽く唇を落としてやると、ふんわり優しく腰の辺りを拘束される。
ヤマのやりたいように任せて、俺はタオルでヤマの髪を乾かしていく。
吸水性に優れているから、頭にタオルを当てているだけでも髪の毛が軽くなっていく。

αの頭に触れる行為は、特別だ。
格下の人間が触れれば、αによっては相手を殺しかねないくらい激怒する。
プライドそのものと言って良いくらい特別な場所を、こんなに無防備に預けてくれるヤマ。
ヤマは、最初から俺が頭に触れても怒ったことが無いんだよな。

今も自分からタオルに頭を寄せてくるし、こんなときじゃなくても撫でてほしいとか、あと俺が怒っているとわざと頭を下げて身体を寄せてくる。
いくら、触れやすい場所に頭があったからって、くしゃくしゃに髪をかき混ぜて良いわけはないんだが。
ついつい触ってしまってこちらがばつが悪くなっても、ヤマは嬉しそうに笑っている。
ヤマは、俺に頭を触れられると気持ちよくて満たされてとても心が穏やかになるらしい。

そんなふうに喜ばれても、俺がヤマの頭に触れることが当たり前なんて思う日は絶対に来ないし。
もし、俺がこれを特別なことだと考えられなくなるくらいに麻痺してしまったら、そんな俺を俺自身が赦せなくなるだろうな。
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