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27 学園祭準備
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二人が話している間に、ヤマは早々に提出されていた書類整理を終えたようだ。
分類分けした書類をクリップでまとめ、その表紙に俺達への指示を付箋に記入して貼り付けた。
それから、明日以降処理する分としてファイルに纏めて入れると引き出しに収納。
ぐっと伸びをしたヤマと目があった。
先程のヤマの涙が忘れられなかったからな。
タイミングをずっと見計らっていた俺は、いそいそと椅子から立ち上がり、ヤマの後ろまで小走りぎみに移動。
突然近づいてきた俺に、何かあったのかと振り向こうとしたヤマを制して背後から椅子ごと抱き締めた。
ヤマの落ち込んでいた気持ちを、少しでも和らげたい気持ちが半分。
あんなに傷ついていたことに、気付いていなかった申し訳なさが半分。
誰よりも側にいて、ヤマのことをこんなにも大切な存在だと自覚しているのに。
情けない。
まだまだ俺には足りないことが多いな。
ヤマは、抱き締めた俺の腕に自分の腕を重ね、「どうしたの、カナ?」と心配そうに俺の顔色を伺ってくる。
「ん、ヤマにパワーを充電。
今年の学園祭、大成功させような。
俺も準備頑張るから」
「うわぁ、カナからパワー貰ったら、大成功しかないだろうっ」
予想と違った答えに、ヤマは破顔。
右手を取られ、その甲に軽く唇を落とされ。
俺もヤマの旋毛に唇を落として。
楽しくなってきて、クスクス笑いあっていたら。
「はーぃ、そこの体育祭公式バカップル。
そう言うことは、帰ってからしなさい」
いつものことだとスルーされるかと思ったんだが。
竹居は、かなり嬉しそうに学園長の言葉を丸々用いてからかってきた。
タイミングの良さからすると、もしかしてこの言葉言いたさに待ち構えていたんじゃないだろうな。
これに三枝が反応。
「ほんまに、ラブラブやなぁ」
嬉しそうにヤマと俺を見比べる。
先程は出なかった、いつもの言葉。
それが聞けて正直ホッとする。
良かった。
笹部が居なければ、調子を取り戻せるんだな。
ふぅと力が抜けてヤマにもたれたら、また竹居から「帰ってからしなさい」と言われたが。
一番近い席から見ていた田栗は、切ない表情でしみじみと呟く。
「本当に、羨ましいですね」
「こらこら、ホマレン。
独り者の私達の前で、そんなこと言っちゃダメだよー
お家帰ったら、タグリンとラブラブ出来るしいーじゃん」
「そうそうっ
海ちゃんと私と・・・あと竹居センパイは哀しい独り者なんだよー」
「おーぃ、お前らと一緒にするな。
俺には複数相手がいるんだから」
「複数相手がいるより、たった一人の相手がいないと。
ねぇ、空ちゃんっ」
「だよっ、だよっ、海ちゃん」
「・・・騒がしいな。
脱線したままなら、俺は帰らせてもらうぞ」
「「うわぁー、松野センパイってば、つめたーぃ」」
目の前で繰り広げられる賑やかなやり取りに、ヤマも俺も顔を見合わせて笑っていた。
分類分けした書類をクリップでまとめ、その表紙に俺達への指示を付箋に記入して貼り付けた。
それから、明日以降処理する分としてファイルに纏めて入れると引き出しに収納。
ぐっと伸びをしたヤマと目があった。
先程のヤマの涙が忘れられなかったからな。
タイミングをずっと見計らっていた俺は、いそいそと椅子から立ち上がり、ヤマの後ろまで小走りぎみに移動。
突然近づいてきた俺に、何かあったのかと振り向こうとしたヤマを制して背後から椅子ごと抱き締めた。
ヤマの落ち込んでいた気持ちを、少しでも和らげたい気持ちが半分。
あんなに傷ついていたことに、気付いていなかった申し訳なさが半分。
誰よりも側にいて、ヤマのことをこんなにも大切な存在だと自覚しているのに。
情けない。
まだまだ俺には足りないことが多いな。
ヤマは、抱き締めた俺の腕に自分の腕を重ね、「どうしたの、カナ?」と心配そうに俺の顔色を伺ってくる。
「ん、ヤマにパワーを充電。
今年の学園祭、大成功させような。
俺も準備頑張るから」
「うわぁ、カナからパワー貰ったら、大成功しかないだろうっ」
予想と違った答えに、ヤマは破顔。
右手を取られ、その甲に軽く唇を落とされ。
俺もヤマの旋毛に唇を落として。
楽しくなってきて、クスクス笑いあっていたら。
「はーぃ、そこの体育祭公式バカップル。
そう言うことは、帰ってからしなさい」
いつものことだとスルーされるかと思ったんだが。
竹居は、かなり嬉しそうに学園長の言葉を丸々用いてからかってきた。
タイミングの良さからすると、もしかしてこの言葉言いたさに待ち構えていたんじゃないだろうな。
これに三枝が反応。
「ほんまに、ラブラブやなぁ」
嬉しそうにヤマと俺を見比べる。
先程は出なかった、いつもの言葉。
それが聞けて正直ホッとする。
良かった。
笹部が居なければ、調子を取り戻せるんだな。
ふぅと力が抜けてヤマにもたれたら、また竹居から「帰ってからしなさい」と言われたが。
一番近い席から見ていた田栗は、切ない表情でしみじみと呟く。
「本当に、羨ましいですね」
「こらこら、ホマレン。
独り者の私達の前で、そんなこと言っちゃダメだよー
お家帰ったら、タグリンとラブラブ出来るしいーじゃん」
「そうそうっ
海ちゃんと私と・・・あと竹居センパイは哀しい独り者なんだよー」
「おーぃ、お前らと一緒にするな。
俺には複数相手がいるんだから」
「複数相手がいるより、たった一人の相手がいないと。
ねぇ、空ちゃんっ」
「だよっ、だよっ、海ちゃん」
「・・・騒がしいな。
脱線したままなら、俺は帰らせてもらうぞ」
「「うわぁー、松野センパイってば、つめたーぃ」」
目の前で繰り広げられる賑やかなやり取りに、ヤマも俺も顔を見合わせて笑っていた。
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どうしたら誤解は解けるんだ…?
シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。
書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
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