ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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27 学園祭準備

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負傷者を何人も出したあの事件。
それを明るい口調でさらりと語るのは、三枝を怖がらせないためなのか、竹居の性格なのか。
竹居のことだから、そこまで三枝に気を使ってないか。

俺は下校した後だったが、入学早々の騒ぎに翌日全校生徒対象の集会が開かれた。
萩野から、自分の力を過信し勝ちな年代が集まれば、群れのぶつかり合いは避けて通れないとは聞いていたが。
修復が間に合わなかった現場の窓には、抜かれたガラスの代わりに段ボールが貼られ、入院する生徒まで出ていたしな。
ここまで大袈裟にぶつからないために、幼い頃からαの同年代を集めた集会が有るんじゃなかったのかと呆れたものだ。

それに、平穏無事に学園で6年間過ごさなければと緊張していた俺にとっては大迷惑。
騒ぎを起こしたことで、「今年の一年生は問題がある」と教師に最悪な印象を植え付けたからな。
桜宮家のαとして優秀な生徒でありたかった俺が、どれほど苦心して教師への印象を変えようとしたか!
笹部は、そもそもやりすぎなんだ!


「相手と笹部は、謹慎処分。
俺と松野は、厳重注意。
怪我の程度は、バストバンドの固定だけで済んだ俺より相手の方が重症だったけどさ。
どちらから手を出したのかは、監視カメラに動画も残ってるし言い逃れも出来ない。
菊川と笹部の報復を怖れた相手は、謹慎期間中に全員さっさと転校してさよーならっ」


おちゃらけて、手まで振ってみせる竹居。
三枝は、そんな軽いのりだったからなのか。
入院と聞かされても構えた様子はない。
ただ、「肋骨折るなんて痛そうやなぁ」と自分の肋骨をそっと撫でている。
松野は、話を引き継ぐ。


「相手は、10人、いや、もう少しいたか?
それを笹部は一人でほぼ制圧していたが、完全敗北を認めさせる前に高等部から田栗先生まで出て来て止められたからな。
笹部は、菊川の群れに喧嘩を売られたのに、中途半端な状況で終わらせてしまった責任を感じているし。
田栗先生に鎮圧されたことで、恐らく苦手意識を持ったんだろう」

「それ以降、笹部はやり方を変えてさ。
売られた喧嘩は、わざと相手から決闘を自分に申し込むようにもってってんだよ。
一対一の決闘だと、勝敗が決まるまで周りは手を出せなくなるし。
俺達αは、プライドが高いの多いしね。
自分から申し込んだのに、負けそうだからさっさと敗北を認めますってわけにはいかない。
まぁ、笹部が動かない菊川の代わりに動いてくれたおかげで、喧嘩吹っ掛けてくるやつも、決闘申し込んでくるやつも段々減ってったんだけどな」


竹居は、その点は平和になって助かると笑う。
まぁ、確かにな。
力を周りに見せつけたりもしない、以前の緩いヤマのやり方だと、相手に侮れるからな。
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