650 / 911
27 学園祭準備
10
しおりを挟む
ヤマが襲われた事件は、当日の来場者や生徒会役員を除く生徒には最後まで伏され、学園祭翌日に公表した。
桜宮財閥が動いたから、通常より早期に処罰決定を含めて事件は終結。
事件を、俺とヤマの恋愛譚のひとつとして置き換えるような情報操作はされていたが。
βは他人事としてその美談に花を咲かせても、フェロモンレイプを恐れるαはそうもいかない。
結果、去年度よりも学園の内部進学率、編入試験、共に倍率が下がった。
これは、由々しき事態だ。
このままでは、ヤマの『フェロモンレイプ未遂事件の生徒会長』としての印象が強すぎる。
ヤマは、絶対に歴代で一番優秀な生徒会長だ。
ヤマが生徒会長になってから、学園内でのαの小競り合いは激減。
事件後、Ωを炙り出して排斥しようとする厄介な輩も現れなかった。
ヤマの名誉のためにも、今年の学園祭は成功させる。
そして、ヤマの優生ぶりを改めて広めなければ。
ペンを握っていた手に力が入る。
フェロモンレイプ対策として設立した、風紀委員会の活動広報展示もした方がいいだろう。
去年の事件を無かったことのように隠したところで、学園祭の来場者が全く意識してないわけがない。
中等部の生徒が参加するようなブースを設けても良いな。
いや、一から任せるとなると時間が足りないから、その場合はテーマくらいこちらで絞った方が・・・
あとは、学園内ではバース性の垣根を越えた活動が出来ていることを知らせたい。
これは、各クラスの内容から分かりやすいものをピックアップして新聞部に特集を組ませるか。
「・・・先輩、桜宮先輩」
「ん?」
正面に座る田栗から名前を呼ばれ、顔をあげる。
憂いに満ちた表情の田栗と目が合い、ドキリとした。
フェロモン操作が出来ないΩのはずなのに、その切ない表情と心を読まれそうなくらい引き込まれる瞳、田栗のもつ独特の雰囲気に飲まれそうになる。
「え、な、なんだ??」
「あの、生徒会長が半泣きです・・・」
田栗の視線につられて振り返ると、そこには涙ぐんでいるヤマ。
その隣で冷たい目をこちらに向ける松野が立っていた。
「桜宮、上の空か?」
「・・・すみません」
一体何があったんだ??
考えに没頭していて、なんでこんな状況になっているかわからない。
咄嗟に、ヤマに申し訳ないことをしたのは感じたからヤマに頭を下げてみたが。
困惑した俺に田栗はふんわり微笑むと、間に入って取り成してくれた。
桜宮財閥が動いたから、通常より早期に処罰決定を含めて事件は終結。
事件を、俺とヤマの恋愛譚のひとつとして置き換えるような情報操作はされていたが。
βは他人事としてその美談に花を咲かせても、フェロモンレイプを恐れるαはそうもいかない。
結果、去年度よりも学園の内部進学率、編入試験、共に倍率が下がった。
これは、由々しき事態だ。
このままでは、ヤマの『フェロモンレイプ未遂事件の生徒会長』としての印象が強すぎる。
ヤマは、絶対に歴代で一番優秀な生徒会長だ。
ヤマが生徒会長になってから、学園内でのαの小競り合いは激減。
事件後、Ωを炙り出して排斥しようとする厄介な輩も現れなかった。
ヤマの名誉のためにも、今年の学園祭は成功させる。
そして、ヤマの優生ぶりを改めて広めなければ。
ペンを握っていた手に力が入る。
フェロモンレイプ対策として設立した、風紀委員会の活動広報展示もした方がいいだろう。
去年の事件を無かったことのように隠したところで、学園祭の来場者が全く意識してないわけがない。
中等部の生徒が参加するようなブースを設けても良いな。
いや、一から任せるとなると時間が足りないから、その場合はテーマくらいこちらで絞った方が・・・
あとは、学園内ではバース性の垣根を越えた活動が出来ていることを知らせたい。
これは、各クラスの内容から分かりやすいものをピックアップして新聞部に特集を組ませるか。
「・・・先輩、桜宮先輩」
「ん?」
正面に座る田栗から名前を呼ばれ、顔をあげる。
憂いに満ちた表情の田栗と目が合い、ドキリとした。
フェロモン操作が出来ないΩのはずなのに、その切ない表情と心を読まれそうなくらい引き込まれる瞳、田栗のもつ独特の雰囲気に飲まれそうになる。
「え、な、なんだ??」
「あの、生徒会長が半泣きです・・・」
田栗の視線につられて振り返ると、そこには涙ぐんでいるヤマ。
その隣で冷たい目をこちらに向ける松野が立っていた。
「桜宮、上の空か?」
「・・・すみません」
一体何があったんだ??
考えに没頭していて、なんでこんな状況になっているかわからない。
咄嗟に、ヤマに申し訳ないことをしたのは感じたからヤマに頭を下げてみたが。
困惑した俺に田栗はふんわり微笑むと、間に入って取り成してくれた。
1
お気に入りに追加
1,441
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載



【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点


偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜
白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。
しかし、1つだけ欠点がある。
彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。
俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。
彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。
どうしたら誤解は解けるんだ…?
シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。
書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる