ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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27 学園祭準備

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ヤマが襲われた事件は、当日の来場者や生徒会役員を除く生徒には最後まで伏され、学園祭翌日に公表した。
桜宮財閥が動いたから、通常より早期に処罰決定を含めて事件は終結。
事件を、俺とヤマの恋愛譚のひとつとして置き換えるような情報操作はされていたが。

βは他人事としてその美談に花を咲かせても、フェロモンレイプを恐れるαはそうもいかない。
結果、去年度よりも学園の内部進学率、編入試験、共に倍率が下がった。

これは、由々しき事態だ。
このままでは、ヤマの『フェロモンレイプ未遂事件の生徒会長』としての印象が強すぎる。
ヤマは、絶対に歴代で一番優秀な生徒会長だ。
ヤマが生徒会長になってから、学園内でのαの小競り合いは激減。
事件後、Ωを炙り出して排斥しようとする厄介な輩も現れなかった。

ヤマの名誉のためにも、今年の学園祭は成功させる。
そして、ヤマの優生ぶりを改めて広めなければ。
ペンを握っていた手に力が入る。

フェロモンレイプ対策として設立した、風紀委員会の活動広報展示もした方がいいだろう。
去年の事件を無かったことのように隠したところで、学園祭の来場者が全く意識してないわけがない。
中等部の生徒が参加するようなブースを設けても良いな。
いや、一から任せるとなると時間が足りないから、その場合はテーマくらいこちらで絞った方が・・・
あとは、学園内ではバース性の垣根を越えた活動が出来ていることを知らせたい。
これは、各クラスの内容から分かりやすいものをピックアップして新聞部に特集を組ませるか。


「・・・先輩、桜宮先輩」

「ん?」


正面に座る田栗から名前を呼ばれ、顔をあげる。
憂いに満ちた表情の田栗と目が合い、ドキリとした。
フェロモン操作が出来ないΩのはずなのに、その切ない表情と心を読まれそうなくらい引き込まれる瞳、田栗のもつ独特の雰囲気に飲まれそうになる。


「え、な、なんだ??」

「あの、生徒会長が半泣きです・・・」


田栗の視線につられて振り返ると、そこには涙ぐんでいるヤマ。
その隣で冷たい目をこちらに向ける松野が立っていた。


「桜宮、上の空か?」

「・・・すみません」


一体何があったんだ??
考えに没頭していて、なんでこんな状況になっているかわからない。
咄嗟に、ヤマに申し訳ないことをしたのは感じたからヤマに頭を下げてみたが。

困惑した俺に田栗はふんわり微笑むと、間に入って取り成してくれた。
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