ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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27 学園祭準備

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「樟葉」


静かに名前を呼んだヤマは、俺に異常がないかを確認するのが先で樟葉の方を振り返りもしない。
でも、怒っているのは十分に伝わる声だった。
樟葉は、迫力に押され身を縮こまらせる。
「ご、ごめんなさぃ」と、柴田から手を離してもらいその場で深々と頭を下げた。
柴田まで「申し訳ありません」と頭を下げるから、こちらの方が恐縮してしまう。


「俺は、大丈夫だ」


な、とヤマを安心させるために笑いかけ、手を借りて立ち上がる。
挫いてないとわかるようにその場で足踏みすると、ヤマはほっとしたらしい。
「気を付けろ」と樟葉に掛けた声から、固さが抜けていた。
ただ、手はそのまま離してもらえず、繋いだままになった。


「二人とも、怪我せんで良かったわ」


三枝は、バランスを崩した時に二人の手から落ちてしまったボタンを拾っておいてくれたようだ。
礼を言って受け取る。


「樟葉も怪我が無くて良かった」

「はぅぅ、かなちゃん、本当にごめんねぇ」

「わざとじゃないんだし、これ以上謝るなよ」


樟葉に近寄って、肩のひとつも気にしなくて良いと軽く叩きたいんだが。
また巻き込まれるとでも思っているのか、ヤマは手を離してくれない。
女子生徒達は怪我がないとわかると、「うん、みこたんには当日の宣伝部長をして貰いましょう」「籠がいるわね」と既に話を学園祭に戻して円になっていた。
樟葉が、身体のどこかに包帯を巻いていたり、頭にネットを被っていたり、転んだり、よろめいたりしているのは日常茶飯事だからな。
珍しく、ここ一週間は怪我をしてなかったんだが油断は禁物だった。

芝浦は、少し離れた場所で樟葉を伺いホッとしているのがわかった。
目が合うと、「ん?」と首を傾げられたが・・・俺に見られていたことに気付いてないようだ。
柴田が先だったとしても、芝浦もあのまま駆けつけて、直接声を掛けてやれば良いのに。
番なのに、どこかよそよそしかったり。
甘やかしたり。
この二人の、いや、三人の不思議な距離の取り方は、今に始まったことじゃないんだが。
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