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26 体育祭 side 翔
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「はぁ?!」
「アーッハッハッハッ!」
グラウンドであんぐり口を開いた田栗先生と。
隣の本部テントから響く爆笑。
田栗は、キッと本部テントの主を睨んだ。
「お、叔父さん、笑わなくてもっ」
「ヒィーーッ、腹がよじれるっっ
アイツにダーリンって!!」
「叔父さんが教えてくれたのにっ」
声の主と田栗の間に立っていた人の壁が割れ、本部テントの中央席に座っていた学園長が大笑いしている姿が俺からも見えた。
髪や目の色は田栗と同じブルーブラックで、サイドとバックを田栗より刈り上げたショートヘア。
涼やかな目元はよく似ているけど、田栗のような見惚れてしまうような麗人という印象はない。
砕けた親しみやすさを絶えず出していて、優生αには珍しいタイプだ。
混合バース性のこの学園を取り仕切るだけのことはある。
でも、さすがにこの爆笑する姿は初めて見るな。
周りもどう接してよいのかわからず当惑。
本部テントで応援しようと立ち上がっていた他の来賓や放送担当の生徒は、学園長と田栗に挟まれ気まずい雰囲気だ。
「いやぁ、まさか、本当に呼ぶとは思わなかったし。
誉は、相変わらず源蔵のこととなると可愛いなぁ」
クックッとまだ笑っている学園長から、田栗はふくれ面で視線を外した。
田栗は中等部から知っているけど、こんな崩れた顔もするんだな。
怒っていると言うより、これ以上何をいっても無駄だと諦めているように見える。
田栗はストンと椅子に腰を下ろし、離れている田栗先生に向かって手を合わせ謝る。
すべてを察したらしい田栗先生は、学園長を軽く睨んで溜め息。
周りの生徒や教師から囃し立てられても、軽くあしらっている。
「なんなん?なんなん?」
三枝先輩が、興味津々に瞳を輝かせて尋ねると、田栗はムゥと口を尖らせボソボソと答えた。
「田栗先生、自分の名前はあまりお好きじゃないみたいで。
でも、私としては、公の場で皆と同じ田栗先生は嫌だし、叔父さんに相談していたんですよ」
「田栗先生の名前って、なんやっけ?」
「三枝セーンパイ、ゲンゾーだよ」
誉より先に、海が答える。
「ゲンゾー?
ん、まぁ、最近はあんま無い名前やけど、変ちゃうやん?」
「ですよねっ」
田栗のテンションが急に上がる。
三枝に向かって、いかにこの名前が田栗先生らしくて格好良いかを語りだした勢いが止まらない。
機嫌も一気に回復したらしく、満面の笑顔は年相応の幼さが出ていて海が「ホマレン、可愛いっっ」と自分の大きな胸に抱き寄せ頬擦り。
本部テントからは、この様子を眺めていた学園長の笑う声がまた聞こえてきた。
「アーッハッハッハッ!」
グラウンドであんぐり口を開いた田栗先生と。
隣の本部テントから響く爆笑。
田栗は、キッと本部テントの主を睨んだ。
「お、叔父さん、笑わなくてもっ」
「ヒィーーッ、腹がよじれるっっ
アイツにダーリンって!!」
「叔父さんが教えてくれたのにっ」
声の主と田栗の間に立っていた人の壁が割れ、本部テントの中央席に座っていた学園長が大笑いしている姿が俺からも見えた。
髪や目の色は田栗と同じブルーブラックで、サイドとバックを田栗より刈り上げたショートヘア。
涼やかな目元はよく似ているけど、田栗のような見惚れてしまうような麗人という印象はない。
砕けた親しみやすさを絶えず出していて、優生αには珍しいタイプだ。
混合バース性のこの学園を取り仕切るだけのことはある。
でも、さすがにこの爆笑する姿は初めて見るな。
周りもどう接してよいのかわからず当惑。
本部テントで応援しようと立ち上がっていた他の来賓や放送担当の生徒は、学園長と田栗に挟まれ気まずい雰囲気だ。
「いやぁ、まさか、本当に呼ぶとは思わなかったし。
誉は、相変わらず源蔵のこととなると可愛いなぁ」
クックッとまだ笑っている学園長から、田栗はふくれ面で視線を外した。
田栗は中等部から知っているけど、こんな崩れた顔もするんだな。
怒っていると言うより、これ以上何をいっても無駄だと諦めているように見える。
田栗はストンと椅子に腰を下ろし、離れている田栗先生に向かって手を合わせ謝る。
すべてを察したらしい田栗先生は、学園長を軽く睨んで溜め息。
周りの生徒や教師から囃し立てられても、軽くあしらっている。
「なんなん?なんなん?」
三枝先輩が、興味津々に瞳を輝かせて尋ねると、田栗はムゥと口を尖らせボソボソと答えた。
「田栗先生、自分の名前はあまりお好きじゃないみたいで。
でも、私としては、公の場で皆と同じ田栗先生は嫌だし、叔父さんに相談していたんですよ」
「田栗先生の名前って、なんやっけ?」
「三枝セーンパイ、ゲンゾーだよ」
誉より先に、海が答える。
「ゲンゾー?
ん、まぁ、最近はあんま無い名前やけど、変ちゃうやん?」
「ですよねっ」
田栗のテンションが急に上がる。
三枝に向かって、いかにこの名前が田栗先生らしくて格好良いかを語りだした勢いが止まらない。
機嫌も一気に回復したらしく、満面の笑顔は年相応の幼さが出ていて海が「ホマレン、可愛いっっ」と自分の大きな胸に抱き寄せ頬擦り。
本部テントからは、この様子を眺めていた学園長の笑う声がまた聞こえてきた。
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