ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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26 体育祭 side 翔

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ハーフパンツの裾からのぞく膝小僧。
指を伸ばすだけで触れるのも容易い至近距離に三枝先輩がいる。
汗ばんだ肌に触りたい、指だけじゃなく肌を直に重ねたい。
膝裏から股へ指を這わし、服を捲り、隠れた素肌を眺めて味わい尽くして・・・俺のものにしたい。

そんな疚しい考えが、ギシギシと牙を軋ませる。


「どうしたん、桂木君?」


三枝先輩は、言い返さない俺を不思議がってこちらに身を屈めてきた。
近づいてきた顔を避けて背を反らし、三枝先輩にこの劣情が気付かれないよう自然な動作を装い掌で口元を隠し誤魔化す。


「すみません、ちょっと恥ずかしくて」

「ほんまやで!
これで、桂木君が歌音ちゃんに起こされてんの、俺にはバレたんやからな」


屈託なく笑う三枝先輩。

あぁ、本当にまずいな。

三枝先輩の側にいるだけで、幸せな気持ちに満たされていたのに。
笹部先輩の存在が、俺には大きすぎる。
敵わない相手にこの人を取られるのが怖い。
手も足も出せないまま、三枝先輩が笹部先輩のものになるんじゃないかという焦りで気持ちが急いてしまう。

噛みたい。

三枝先輩を噛んで、俺のものにしたい。

今まで感じたことがない強い所有欲に突き動かされ、本能のまま牙をその身に埋めてしまいそうだ。


「三枝先輩、桂木さん、そろそろ始まりますよ」


椅子を見やすい場所に移動させ、ついでに俺達の分も並べ終わった田栗。
俺の変化に気づいていないらしく、早くこちらに座ってくださいと三枝先輩に手を伸ばして立ち上がるのを手伝う。


「ふふふ、おおきに。
ホマレンにこんなんしてもろたら、お姫様になったみたいやわ」


椅子に座るところまで完璧にエスコートされた三枝先輩。
大満足の笑顔が眩しい。


「桂木さんも早くしないと始まってしまいますよ?
お手をお貸ししましょうか?」

「遠慮しとく」


俺は、牙が元通り収まったことを確認してから手をどけて自力で立ち上がった。
休んだお陰で、身体からフェロモンによるダメージが消えている。
これなら、今からでもリレーに参加できそうなんだけど・・・田栗先生から任されてしまうとここから動けないな。

田栗は、桜宮先輩のように番相手のフェロモンを身につけてはいないから番持ちとはいえ無防備だ。
クラスメートには、心の中で詫びながらこの場で応援することにした。
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