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26 体育祭 side 翔
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「・・・く・ん・・・きて・・・起きてぇな」
心地よい眠りを遮ろうとする声が、大きくなり小さくなり、波打ちながら沈んでいた意識をふわりと浮き上がらせる。
そうか、もう、起きる時間なのか・・・けど、まだ、眠い。
妨害されたくなくて、身体の向きを変えようとしたけど、半覚醒の重い身体は思い通りに動かなかった。
仕方無く、ゆらゆらと容赦なく揺らしてくる腕を捕らえる。
いつもより優しい起こし方は、感謝するけれど。
俺は、もう少し寝ていたい。
身体が疲れているのか、僅かでも動かすのが酷く億劫なんだ。
欠伸を噛み殺し、妹が調子を取り戻して暴れる前に胸に引き寄せ確保。
なんか、重いし、大きい?
それに、大人しいな。
違和感を感じたけれど、とにかく今は寝たい。
それが優先されて、揺らされることが無くなったことに安心してしまう。
兄に優しさをくれ。
「・・・歌音、まだ、眠いから」
「か、桂木君っっ
ちゃんと起きて!
俺、歌音ちゃんやないってばっ」
?!
思いがけない声が耳元で響いて、一瞬で目が覚めた。
と、同時に、ふわりと日向の香りが鼻孔をくすぐり、見慣れているけど間近で触れたことの無かったイノセントグレージュのとろけそうな艶を含んだ髪が目の前で揺れていることに続けて驚く。
え、あれ?
歌音、じゃ、ない?
「桂木君、離してぇなあっ」
腕の力を緩めると、仰向けの俺の身体の上でもぞもぞと起き上がった三枝先輩がそこにいた。
俺の腰を跨ぐ格好で膝立ちになった三枝先輩から、「もぉ、びっくりするやんっ」と責められても頭が追い付かない。
まだ、夢見てるんだろうか??
「え、っと・・・俺、寝惚けてましたか?」
「寝惚けてた!」
三枝先輩は、呆けている俺を半目で見下ろし、キッパリ言い切る。
周りを見渡すと、救護所スペースには椅子に座ってクスクス笑う田栗しか残っていなかった。
隣の本部にいる先生や来賓は、最前列に固まり、俺と三枝先輩に注目している人間もいない。
「もうすぐ、一年のクラス別リレーが始まるで?
田栗先生も行ってしもたし、ホマレンのことは帰ってくるまで桂木君に任せるからここに居とくようにって」
「・・・はぁ」
なんだろう。
俺に跨がる三枝先輩の姿があまりに暴力的で、視覚どころか思考も乗っ取られてうまく動かない・・・
わからないままに、欲望に任せてもう一度抱き締めたくなってしまう。
心地よい眠りを遮ろうとする声が、大きくなり小さくなり、波打ちながら沈んでいた意識をふわりと浮き上がらせる。
そうか、もう、起きる時間なのか・・・けど、まだ、眠い。
妨害されたくなくて、身体の向きを変えようとしたけど、半覚醒の重い身体は思い通りに動かなかった。
仕方無く、ゆらゆらと容赦なく揺らしてくる腕を捕らえる。
いつもより優しい起こし方は、感謝するけれど。
俺は、もう少し寝ていたい。
身体が疲れているのか、僅かでも動かすのが酷く億劫なんだ。
欠伸を噛み殺し、妹が調子を取り戻して暴れる前に胸に引き寄せ確保。
なんか、重いし、大きい?
それに、大人しいな。
違和感を感じたけれど、とにかく今は寝たい。
それが優先されて、揺らされることが無くなったことに安心してしまう。
兄に優しさをくれ。
「・・・歌音、まだ、眠いから」
「か、桂木君っっ
ちゃんと起きて!
俺、歌音ちゃんやないってばっ」
?!
思いがけない声が耳元で響いて、一瞬で目が覚めた。
と、同時に、ふわりと日向の香りが鼻孔をくすぐり、見慣れているけど間近で触れたことの無かったイノセントグレージュのとろけそうな艶を含んだ髪が目の前で揺れていることに続けて驚く。
え、あれ?
歌音、じゃ、ない?
「桂木君、離してぇなあっ」
腕の力を緩めると、仰向けの俺の身体の上でもぞもぞと起き上がった三枝先輩がそこにいた。
俺の腰を跨ぐ格好で膝立ちになった三枝先輩から、「もぉ、びっくりするやんっ」と責められても頭が追い付かない。
まだ、夢見てるんだろうか??
「え、っと・・・俺、寝惚けてましたか?」
「寝惚けてた!」
三枝先輩は、呆けている俺を半目で見下ろし、キッパリ言い切る。
周りを見渡すと、救護所スペースには椅子に座ってクスクス笑う田栗しか残っていなかった。
隣の本部にいる先生や来賓は、最前列に固まり、俺と三枝先輩に注目している人間もいない。
「もうすぐ、一年のクラス別リレーが始まるで?
田栗先生も行ってしもたし、ホマレンのことは帰ってくるまで桂木君に任せるからここに居とくようにって」
「・・・はぁ」
なんだろう。
俺に跨がる三枝先輩の姿があまりに暴力的で、視覚どころか思考も乗っ取られてうまく動かない・・・
わからないままに、欲望に任せてもう一度抱き締めたくなってしまう。
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