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26 体育祭 side 翔

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今日の田栗は、放送席や来賓席のある本部に隣接した救護スペースにいる。
田栗先生が近くにいれば、田栗に近寄ろうとする生徒はまず居ない。
今日は、二人の"虫除け"効果は不要なんだろう。


「「カケルン、行ってくるね~」」


女子生徒を挟み、三人で仲良く手を繋いで走っていく。
三枝先輩は・・・もう机の側にその姿はなかった。
自分のクラスの応援席に戻り、菊川先輩と桜宮先輩と一緒にゴールに向かって走っているところ。
途中で海や空と並び、何か話ながら一緒にゴールした。
ポイントも加算されないし、特に借り物競争はお遊びの要素が大きい。
全力で挑む生徒もいないようだ。


「3組と4組、同時に2着でゴーール!
3組、"虫除け"に選んだのはこの二人。
4組は、"番"で高等部で一番有名なこの二人を選んできました!」


梶谷先生のコールに、お題に沿っているかを査定する学園長が本部で○と書かれた表示札を上げる。
三枝先輩はほっと頬を緩め、菊川先輩と桜宮先輩にお礼を言っているみたいだ。
が。
その背後から、双子が三枝先輩に抱き付いてじゃれ始める。
ここからじゃ、何を話してるか全然わからない。
結局、借り物競争に設けられた時間が終わるまで、待機場所から海も空も戻ってこず。
俺が借り物競争のお題に引っ掛かることもなくて、最後まで楽しそうに三枝先輩が話している様子を席で眺めることしか出来なかった。


「アッハッハー、カケルン、見た?見た?
兄ぃ、めっちゃ悔しそうにしてたよぉ!」


笑いながら戻ってきた海を、無言で迎える。
空は、自分のクラスに戻ったようだ。
三枝先輩、海や空とは楽しそうに話して笑顔を向けていた。
俺は、昨日の三枝先輩を元気付けることが出来なかったのにな。


「おぉ?!
なんでカケルンまでご機嫌斜めなんですかー?」


絡んでくる海を無視したまま、ちょうど三枝先輩が応援席に戻ったのを確認して席を立つ。
三枝先輩に声を掛ける前に、他の生徒が気付いてわざわざ三枝先輩を呼んでくれた。

三枝先輩が応援席の後ろに出てきてくれたのでそこで立ち話。
基本、体育祭で出番がない時間は自分のクラスに居るよう言われてるけど厳しい取り締まりはない。
三年生で受験を控えている生徒は、施錠されていないメディアセンターで勉強している人もいるらしい。


「三枝先輩、お疲れ様です。
お題、難しいのじゃなくて良かったですね」

「そうやねん!
めっちゃほっとしたわぁ」


三枝先輩は、他の種目に出ないから肩の荷がこれで降りたみたいだ。
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