ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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26 体育祭 side 翔

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試合は、樟葉先輩限定の強力な応援団の力もあって三枝先輩のクラスが勝利。
樟葉先輩以外を狙っても、内野から人が減る度に樟葉先輩が泣きそうな顔をするので相手のクラスは最後までやりにくそうだった。

試合終了の礼が終わると、樟葉先輩は二回り大きなジャージを靡かせながらこちらに小走りでやって来た。


「フフフ・・・三枝君、勝てたよぉ」

「みこちゃん、お疲れ様っ」


三枝先輩は、その場に立ち上がり手に持っていたタオルを樟葉先輩に手渡す。
後からやって来た桜宮先輩にも手渡して、「かなちゃん、お疲れ様っ」と笑顔で出迎えていた。


「お疲れ様です」


俺も立ち上がり、周りの生徒と一緒に拍手をして出迎えた。
この三人が一ヶ所に集まったことで、初めて揃いの番避けを着けていることに気付いた生徒もいたみたいだ。
拍手をしながら、「あれ?お揃いで着けてるの??」「どこで買ったんだろう」「番持ちなのに、他のΩのことも気にしてるんだ」とコソコソ話す声が聞こえてくる。
女子生徒が着けることは夏休み明けで一気に定着していたけれど、男子生徒ではまだ数えるくらいしかいない。
この三人は、その先駆者なので目立つ。

樟葉先輩は拍手に驚きながら、「えーっと、お疲れ様ぁ」とボソボソ返してくれたけど。
桜宮先輩は軽い会釈で応えながら、俺にはしかめ面。
遅れて「お疲れ様」と素っ気なく言われてしまった。
どうも、俺は桜宮先輩には嫌われているみたいだ。


「えっと、三枝先輩は、これで終わりですよね?」

「うん、そやで。
これから教室に戻ろうと思ってんねん」

「今日は部活もないですよね?
一緒に帰れませんか?
試合のことも、聞きたいので」


放課後の予定を聞いてみたら、三枝先輩は「うん、えぇよ」と快諾してくれた。
嬉しくて、すぐに待ち合わせ時間と場所を決めようとしたら。


「ちょっと待て、三枝!」


桜宮先輩に割って入られる。
焦った様子で三枝先輩の肩に触れた手に余裕はなく、眉間にシワを寄せた顔はまるで三枝先輩を睨んでいるみたいだ。
桜宮先輩が、三枝先輩にこんな顔をするなんて珍しい。


「今日、話をしたいことがある」

「かなちゃん、ごめんな。
桂木君が先約やわ」


桜宮先輩は深刻そうなのに、三枝先輩は迷いなく断ってしまう。
たまたま俺が早かっただけで、優先してもらうのは悪い、よな。


「あの、三枝先輩。
俺は別の日でも・・・」

「今日は、俺が桂木君と帰りたいねん。
桂木君は、気にせんといて」


三枝先輩にはそう言われたけれど。
さ、桜宮先輩の目が親の敵を見るような怨念含んでますが・・・
三枝先輩は、桜宮先輩の様子に気付いているはずなのに、「じゃ、放課後なっ」と俺に手を振って去っていく。
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