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25 体育祭
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「かなちゃん、見すぎ」
俺の知っている笹部とは思えず、ジロジロ顔を見すぎていたようだ。
笹部からやりにくいと顔をしかめられたので、視線をうつ向いている三枝に移した。
ぼんやりと、手元のオレンジジュースを眺めているが大丈夫だろうか?
電子音が響いた後、笹部は完成した自分の飲み物を取り出し口から出してその場でゴクゴク喉を鳴らす。
なんだ、やはり喉が乾いていただけか。
「・・・あのさ、三枝」
「うわっ、ハイ、な、な、なんやろぉ?!」
笹部から名前を急に呼ばれ、三枝の声が裏返る。
咄嗟に右足を一歩引いて身構える姿勢は、警戒全開。
笹部を正視出来ずに目は笹部の足元を泳いでいる。
笹部もこれには参ったようだ。
「んな、構えんなよ。
別に取って食うとかしねーから」
「え、あ、えっと」
笹部のフォローに三枝はオロオロ。
笑いで返すことも出来ずに、どうしたら良いのかと俺に目で訴えて来たから「落ち着け」と声をかけた。
誰にでもフラットな態度をとる三枝まで、笹部の前では人が変わってしまっている。
「あのさ、かなちゃんから俺が三枝を嫌ってるとか言われたけどな。
別に俺はお前を嫌ってねーし、なんでそうなってんのかよくわかんねぇんだけど」
笹部も、ゆっくりと言葉を選びながら三枝に話しかけた。
三枝は、そんな笹部の優しさに目を潤ませる。
「そ、そんなん・・・笹部君、気ぃつかわんとハッキリ言ってくれてええよ」
「いや、気を使うとかしてねーから」
あっさりと否定した笹部に、三枝はホッとするどころかうつ向いたまま下唇を噛んでいた。
なんだか、雲行きが怪しいな。
三枝の勘違いで話は済まないのか?
「き、金曜日な。
笹部君が、バーンッてフェロモン出したとき、俺のことめっちゃ睨んでたやん?
なんか、俺、怒らせたんやろ?
何をやってしもたん?
俺、βばっかのとこにいたし、したらあかんこと知らずにしてたんかな?
いくら自分で考えてもわからへんねん。
笹部君を怒らせてしもた理由をちゃんと知りたい。
知って、また怒らせへんように気ぃつけたいねん」
声は弱々しかったが、なんとか三枝は言いたいことを言えたようだ。
オレンジジュースの入った紙コップを両手で持ったまま、笹部の顔を初めて真っ直ぐ見返した。
俺の知っている笹部とは思えず、ジロジロ顔を見すぎていたようだ。
笹部からやりにくいと顔をしかめられたので、視線をうつ向いている三枝に移した。
ぼんやりと、手元のオレンジジュースを眺めているが大丈夫だろうか?
電子音が響いた後、笹部は完成した自分の飲み物を取り出し口から出してその場でゴクゴク喉を鳴らす。
なんだ、やはり喉が乾いていただけか。
「・・・あのさ、三枝」
「うわっ、ハイ、な、な、なんやろぉ?!」
笹部から名前を急に呼ばれ、三枝の声が裏返る。
咄嗟に右足を一歩引いて身構える姿勢は、警戒全開。
笹部を正視出来ずに目は笹部の足元を泳いでいる。
笹部もこれには参ったようだ。
「んな、構えんなよ。
別に取って食うとかしねーから」
「え、あ、えっと」
笹部のフォローに三枝はオロオロ。
笑いで返すことも出来ずに、どうしたら良いのかと俺に目で訴えて来たから「落ち着け」と声をかけた。
誰にでもフラットな態度をとる三枝まで、笹部の前では人が変わってしまっている。
「あのさ、かなちゃんから俺が三枝を嫌ってるとか言われたけどな。
別に俺はお前を嫌ってねーし、なんでそうなってんのかよくわかんねぇんだけど」
笹部も、ゆっくりと言葉を選びながら三枝に話しかけた。
三枝は、そんな笹部の優しさに目を潤ませる。
「そ、そんなん・・・笹部君、気ぃつかわんとハッキリ言ってくれてええよ」
「いや、気を使うとかしてねーから」
あっさりと否定した笹部に、三枝はホッとするどころかうつ向いたまま下唇を噛んでいた。
なんだか、雲行きが怪しいな。
三枝の勘違いで話は済まないのか?
「き、金曜日な。
笹部君が、バーンッてフェロモン出したとき、俺のことめっちゃ睨んでたやん?
なんか、俺、怒らせたんやろ?
何をやってしもたん?
俺、βばっかのとこにいたし、したらあかんこと知らずにしてたんかな?
いくら自分で考えてもわからへんねん。
笹部君を怒らせてしもた理由をちゃんと知りたい。
知って、また怒らせへんように気ぃつけたいねん」
声は弱々しかったが、なんとか三枝は言いたいことを言えたようだ。
オレンジジュースの入った紙コップを両手で持ったまま、笹部の顔を初めて真っ直ぐ見返した。
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