610 / 911
25 体育祭
19
しおりを挟む
三枝は、驚いて何度も瞼を瞬き。
直ぐに受け取ってもらえなかったからか、笹部は困った顔をしている。
三枝は、笹部が勝手に選んだものに抵抗は無かったようだ。
目の前の紙コップと笹部の顔を何度も見比べていたが、壊れ物に触れるような慎重さで恐る恐る両手を伸ばした。
「あ、ありがとう、笹部君」
「ん」
ぎこちない笑顔を浮かべた三枝に、笹部は軽く頷く。
短すぎる返事だが、口の端が微妙に上がっていて頬が若干緩んでいた。
ホッとしている、のか?
笹部のヤツ、βの三枝の緊張を取ろうとしていたということか?
他人に気を回すなんて、しかも、それがβだと認識している相手になんて・・・明日は雪でも降るんだろうか。
思わず、快晴の青空が広がる窓の外を見てしまった。
その場から動かなくなってしまった二人を前に、座らないんだろうかと不思議に思いつつ行儀が悪いが立ったままストレートティーで乾いた喉を潤す。
そもそも、笹部にとって三枝は嫌う対象にはならない筈なんだ。
笹部が所属するヤマの群れの中で、Ωやβは保護すべき対象として認識される。
それは群れのルールで、個人の感情より優先される。
さすがの笹部も、ルールを無視してβ相手に感情でムキになるほど馬鹿なαではないと思いたい。
こんな風に気を利かせるところなんかは、Ωの俺や樟葉より扱いが上だしな。
いや、ヤマ相手にだってコイツが気を使うところは見かけないし、三枝のことは笹部なりに可愛がっているんじゃないか?
・・・いやいや。
俺が知っている笹部は、いくら同じ群れに居てもβを可愛がるようなヤツじゃないぞ。
笹部にとって、三枝は今の段階でどんな位置にいるんだろうか。
これから恋愛への進展を望む三枝にとって、かなり重要なことを考えようとしていたんだが。
「あ、あんな、笹部君ッ」
意を決した三枝が、考えをまとめる前に口を開いた。
力を込めた手の中で、紙コップがへこみそうになり慌てて持ち直す。
笹部は三枝の余裕の無さに、苦笑い。
ちょっと待ってくれと一度話を止めさせ、自分の飲み物を購入。
三枝に落ち着く時間を与えている、ように見える。
直ぐに受け取ってもらえなかったからか、笹部は困った顔をしている。
三枝は、笹部が勝手に選んだものに抵抗は無かったようだ。
目の前の紙コップと笹部の顔を何度も見比べていたが、壊れ物に触れるような慎重さで恐る恐る両手を伸ばした。
「あ、ありがとう、笹部君」
「ん」
ぎこちない笑顔を浮かべた三枝に、笹部は軽く頷く。
短すぎる返事だが、口の端が微妙に上がっていて頬が若干緩んでいた。
ホッとしている、のか?
笹部のヤツ、βの三枝の緊張を取ろうとしていたということか?
他人に気を回すなんて、しかも、それがβだと認識している相手になんて・・・明日は雪でも降るんだろうか。
思わず、快晴の青空が広がる窓の外を見てしまった。
その場から動かなくなってしまった二人を前に、座らないんだろうかと不思議に思いつつ行儀が悪いが立ったままストレートティーで乾いた喉を潤す。
そもそも、笹部にとって三枝は嫌う対象にはならない筈なんだ。
笹部が所属するヤマの群れの中で、Ωやβは保護すべき対象として認識される。
それは群れのルールで、個人の感情より優先される。
さすがの笹部も、ルールを無視してβ相手に感情でムキになるほど馬鹿なαではないと思いたい。
こんな風に気を利かせるところなんかは、Ωの俺や樟葉より扱いが上だしな。
いや、ヤマ相手にだってコイツが気を使うところは見かけないし、三枝のことは笹部なりに可愛がっているんじゃないか?
・・・いやいや。
俺が知っている笹部は、いくら同じ群れに居てもβを可愛がるようなヤツじゃないぞ。
笹部にとって、三枝は今の段階でどんな位置にいるんだろうか。
これから恋愛への進展を望む三枝にとって、かなり重要なことを考えようとしていたんだが。
「あ、あんな、笹部君ッ」
意を決した三枝が、考えをまとめる前に口を開いた。
力を込めた手の中で、紙コップがへこみそうになり慌てて持ち直す。
笹部は三枝の余裕の無さに、苦笑い。
ちょっと待ってくれと一度話を止めさせ、自分の飲み物を購入。
三枝に落ち着く時間を与えている、ように見える。
1
お気に入りに追加
1,440
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
国王の嫁って意外と面倒ですね。
榎本 ぬこ
BL
一国の王であり、最愛のリヴィウスと結婚したΩのレイ。
愛しい人のためなら例え側妃の方から疎まれようと頑張ると決めていたのですが、そろそろ我慢の限界です。
他に自分だけを愛してくれる人を見つけようと思います。
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる