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25 体育祭

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「はぁ?!
俺が三枝を嫌う??」


笹部の声は、驚きすぎて後半跳ね上がっていた。
「なんだそりゃ?」と、俺に詰め寄り聞いてくるが、それには答えようがない。
俺の中では、お前が不用意な行動で三枝を傷付けてるとしか思ってないからな。


「俺の方が聞きたいくらいだ。
兎に角、また三枝を泣かすなよ」


ビシッとその間抜け面を指差し、さっさとコートに走る。
笹部から「おい、ちょっと待てよ!」と呼び止められたが無視。
こっちは試合が控えているんだ。


「笹部、次の試合までどっか行こうよ」


女子生徒に腕を組まれた笹部が、邪険にその腕を払っている間にコートに戻ることができた。
他の三面でも練習が始まっているから、笹部もわざわざここまで妨害には来ないだろう。

内野に居た三枝は、練習を中断。
俺の反応を、ボールを手に抱えたまま食い入るように待っているから右手の親指と人差し指で丸を作った。
三枝は相当緊張していたらしく、「はぁ~~」と手にしたボールに息をゆるゆる吐き出す。


「ありがとう、かなちゃん」

「三枝の役に立てて良かった」


三枝が投げたボールを胸で受け止め投げ返す。
三枝は、軽く片手でそれを受け止め隣の樟葉に手渡し。
樟葉は、ムンッと気合いをいれると「えーぃ」と両手でボールを投げた。
非力で小柄な樟葉の投げたボールは、予想通りヒョロヒョロと足元に落下。
後ろに立っていた女子生徒が、相手コートに入る前に止めて外野の女子生徒に危なっかしい片手投げでパスを通した。


「む、むずかしぃ」

「大丈夫よ、みこちゃんっ」

「私達も投げれないもんっ」


頑張りましょうっと樟葉に声を掛ける女子生徒達は、一緒のチームにいるだけでキラキラ瞳を輝かせ十分楽しそうだ。
俺の前で練習している相手の一年生は、「もえたんに投げることなんて出来ないよぉ」「投げ方までそっくりなんだけどぉ」と戦いづらそうにしている。

案外、樟葉の魔法少女キューティープリンセスもえみコスプレは作戦として有りなのか?
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