ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

文字の大きさ
上 下
602 / 911
25 体育祭

11

しおりを挟む
「よし、じゃあ、第二試合の後に行くか!」


善は急げだ。
今日まで聞き役に徹していたが、こんなことなら一緒について行くともっと早くに言えば良かったな。
どうすれば良いか悩んでいた三枝は、一人で何とかしたいと思っているのか、それとも俺が手を貸して良いのかどうかわからなくて言い出せなかったんだ。

三枝の役に立てることが純粋に嬉しい。
自然と笑みがこぼれる。


「えぇ?!
試合の後??」


「うん、行こうっ」と勢いよく同意されると思っていたのに、返ってきたのは裏返った声と肩に食い込む指。
うるさくて、痛いんだが・・・思わず顔をしかめる。
三枝は、何を驚いているんだ?


「あぁ、笹部に第二試合が終わるまで中等部武道館から出ていかないようには俺から言ってくるし、心配はいらないぞ」

「心配なんて、思い付きもせぇへんかった!
心の準備が出来てへんし、急すぎひん?」

「本当なら、この試合が終わった後が一番良いと思ったんだが、試合時間に間に合わないと減点されるからな。
第二試合の後では不都合なのか?
準備には十分だろう。
それに、こう言うときにまた時間をおいたら決心が鈍るかもしれないだろう」


万一、三枝が笹部を怒らせていたとしても、ヤマの群れに属している三枝を急に殴ってくることはない。
内輪での争いは、群れの統制を乱すことだからな。
準備に必要なのは、逃げていた三枝の気持ちを変えるだけ。
それはさっき出来ているんだし、他に準備なんてそもそも必要か?

不安そうな三枝の顔を覗きこむと、三枝は怯んだあとに深呼吸を一回。


「・・・か、覚悟を決めるわっ」


やけに悲壮感たっぷりな決意表明だな。
握りこぶしを固めて、三枝は俺の隣に移動してくる。
でも、やはり気持ちは追い付いていないらしく、笹部から出来るだけ見えないように俺に身を寄せて隠れたそうだ。


「そんな、大したことじゃないと思うぞ?」

「もぉーかなちゃん、他人事やと思ってぇ」


ぷぅと頬を膨らませた三枝に笑ってしまう。
うん、調子が戻ってきたな。
しおりを挟む
感想 961

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

欠陥αは運命を追う

豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」 従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。 けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。 ※自己解釈・自己設定有り ※R指定はほぼ無し ※アルファ(攻め)視点

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜

白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。 しかし、1つだけ欠点がある。 彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。 俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。 彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。 どうしたら誤解は解けるんだ…? シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。 書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。

処理中です...