ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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25 体育祭

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鐘の音が、スピーカーを通じ武道館に流れてきた。
体育祭の開始を告げる鐘の音だ。
中等部は通常授業だから、学園長が中庭で鳴らしている音を武道館と体育館、それにグラウンドに中継しているんだ。

武道館の雰囲気が、その音を合図に騒がしくなった。
負けてもいいと思っている生徒もいるんだろうが、やはり当日この場にいると気持ちも変わってくる。
俺も、気持ちが盛り上がってきた。
よし、いよいよ始まるな。
勝たなくても良いとは言われているが、簡単に負けるのは悔しい。
一試合くらいは、勝ってみたい。

今頃ヤマは、高等部のグラウンドでサッカーの作戦会議をしているところだろうか。
そちらの応援に前半だけでも行きたかったんだが、第一試合の審判役を引き受けるつもりでこちらに来てしまった。
今から行っても、移動の距離もあるしな。
それに、開始時間に生徒が間に合わなければペナルティとしてクラス配点から5点も引かれてしまう。
それは避けたい。

第一試合の準備が始まるのを壁際で眺めていたら、何かを取りに出ていった女子三名が戻ってきた。


「お待たせっ
この中から代わりになりそうなのがあったら良いんだけど」


樟葉を早速囲み、鼻付きのおもちゃ眼鏡、数種類のサングラスや伊達眼鏡、革製の眼帯等を次々試着させている。
樟葉は女子生徒と楽しそうに笑っているが。
芝浦と柴田のことを心配して持ってきたのか、それとも面白がっているのか。
鼻付きの眼鏡は、明らかに要らないだろう。

先週から元気のない三枝にそのことを言えば、「なんでこんなんまであんの~」といつもの調子で突っ込んでくれるかと期待したんだが。
話し掛けるより先に、俺の背後に隠れてしまった。


「さ、三枝??」

「・・・目があってしもたぁ」


弱った声は、三枝らしくない。
四面用意されている第一試合のコートを確認すると、誰と目があったのか本人に確認する必要もなかった。
俺達がいる場所の向かいのコートに、笹部が立っていた。

俺と目が合うと、笹部から気まずそうに逸らされる。
ん?
なんで、笹部は俺から目を逸らしているんだ?
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