ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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25 体育祭

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「アイパッチ?」

「うん、アイパッチ」


三枝の言葉を反復する。
色白の樟葉の左目を覆った白色のアイパッチ。
確かに、貼るタイプだから眼帯と言うよりもアイパッチが正しい呼称なんだろう。

今朝から前髪を上げていることが注目され過ぎて、誰もアイパッチのことは気にしているように見えなかったが。
これが、なんだと言うんだ?


「みこちゃん、朝から気にして触ってたし。
芝浦君がギリギリに到着したとき、いつもやったら扉の方振り返るのに前見たまんまやったし。
それなんかなぁーって」


三枝は、廊下側の一列目、前から二番目に座っている。
一番前の樟葉も、後ろから入ってきた芝浦のことも見ていたようだ。
俺は、ずっとヤマとルール確認をしていたからそんな細かいところまで見ていなかった。


「え、あ、うぅ~」


樟葉は、見た目に分かりやすく狼狽えてくれた。
両手でへにゃんと崩れた顔を隠し、三角座りの膝に頭を伏せる。
前髪が無いと、樟葉の隠されていた表情が表に出て・・・可愛い。
ヤマは、俺によく可愛いと言ってくれるが、可愛いとは目の前の樟葉のことだな。

樟葉の可愛さに気付いた同じクラスの女子生徒も、「みこたん、かわわっ」「今日のみこたんでインスピ湧きまくりだわっ」と騒がしい。
・・・みこたんって、樟葉の呼び名か?


「あ、あ、あの、けぇちゃんがね?
これしちゃうと、たぁちゃんにピリピリしちゃうかなぁって思ってはいたんだけどぉ。
ぅー、やっぱり着けるの止めといた方が良かったかなぁ」


顔を隠したまま、樟葉は理由を話してくれた。
なんでピリピリするんだ?と理由を尋ねる前に、女子生徒から質問が飛ぶ。


「アイパッチじゃなかったら良いのかな?」


当たり前のように輪に入られ、驚いて声がした背後を振り向いたら俺達三人を囲むように文字通り囲まれていた。
え、いつのまに??
樟葉も、俺と三枝以外の声に驚いて顔をあげた。


「え、あ、ぅん、多分」

「OK、OK~
普段からみこたんはソレしてないよね?
目を閉じとく必要は、無いんでしょ?
片目を隠せたら良いんだよね?
ちょっと試してほしいものあるから取ってくるよ~」

「私もついてくよ!」


咄嗟に答えた樟葉を、人差し指と親指で作った円を覗いて笑う女子生徒。
わらわらと、そのまま三人が武道館から出ていってしまう。
展開に正直着いていけてないんだが。
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