ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

文字の大きさ
上 下
597 / 911
25 体育祭

6

しおりを挟む
「アイパッチ?」

「うん、アイパッチ」


三枝の言葉を反復する。
色白の樟葉の左目を覆った白色のアイパッチ。
確かに、貼るタイプだから眼帯と言うよりもアイパッチが正しい呼称なんだろう。

今朝から前髪を上げていることが注目され過ぎて、誰もアイパッチのことは気にしているように見えなかったが。
これが、なんだと言うんだ?


「みこちゃん、朝から気にして触ってたし。
芝浦君がギリギリに到着したとき、いつもやったら扉の方振り返るのに前見たまんまやったし。
それなんかなぁーって」


三枝は、廊下側の一列目、前から二番目に座っている。
一番前の樟葉も、後ろから入ってきた芝浦のことも見ていたようだ。
俺は、ずっとヤマとルール確認をしていたからそんな細かいところまで見ていなかった。


「え、あ、うぅ~」


樟葉は、見た目に分かりやすく狼狽えてくれた。
両手でへにゃんと崩れた顔を隠し、三角座りの膝に頭を伏せる。
前髪が無いと、樟葉の隠されていた表情が表に出て・・・可愛い。
ヤマは、俺によく可愛いと言ってくれるが、可愛いとは目の前の樟葉のことだな。

樟葉の可愛さに気付いた同じクラスの女子生徒も、「みこたん、かわわっ」「今日のみこたんでインスピ湧きまくりだわっ」と騒がしい。
・・・みこたんって、樟葉の呼び名か?


「あ、あ、あの、けぇちゃんがね?
これしちゃうと、たぁちゃんにピリピリしちゃうかなぁって思ってはいたんだけどぉ。
ぅー、やっぱり着けるの止めといた方が良かったかなぁ」


顔を隠したまま、樟葉は理由を話してくれた。
なんでピリピリするんだ?と理由を尋ねる前に、女子生徒から質問が飛ぶ。


「アイパッチじゃなかったら良いのかな?」


当たり前のように輪に入られ、驚いて声がした背後を振り向いたら俺達三人を囲むように文字通り囲まれていた。
え、いつのまに??
樟葉も、俺と三枝以外の声に驚いて顔をあげた。


「え、あ、ぅん、多分」

「OK、OK~
普段からみこたんはソレしてないよね?
目を閉じとく必要は、無いんでしょ?
片目を隠せたら良いんだよね?
ちょっと試してほしいものあるから取ってくるよ~」

「私もついてくよ!」


咄嗟に答えた樟葉を、人差し指と親指で作った円を覗いて笑う女子生徒。
わらわらと、そのまま三人が武道館から出ていってしまう。
展開に正直着いていけてないんだが。
しおりを挟む
感想 961

あなたにおすすめの小説

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上手に啼いて

紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。 ■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...