ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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25 体育祭

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体育祭の会場は、中等部と高等部の敷地にまたがる。
高等部だけでは、全30クラスの試合が回しきれないからだ。
総当たりではなく、事前に体育祭実行委員会がくじ引きで対戦を決めるのだが、各学年1クラスと試合をするので1チーム三試合がノルマになる。
なかなかの試合数だ。

俺達のソフトドッジボールは、武道館。
屋内で畳敷き、更にボールも柔らかいのでどのクラスも運動が苦手な生徒や、やる気の無いαが集中する。
勝敗を気にしない消化試合の雰囲気があり、他の2種目に比べて和やかだ。

バスケは体育館で、サッカーは運動場。
試合数が多いので、試合時間の短縮等独自ルールがあるものの大まかなところは変わらない。

高等部体育館へ向かったヤマ達と別れ、ソフトドッジボールチームは固まって中等部の武道館へ向かう。
俺達三人以外は全員女子生徒。
なのに、列の中央を歩いているから、守られているみたいで落ち着かない。
三枝は仲が良いから、一緒に笑顔で話していたが。

けれど、準備に忙しそうな食堂を突っ切るとそこからは無言で移動だ。
中等部は通常授業だからな。
妨害しないよう、注意しなければならない。

樟葉を中央に、俺と三枝で並んで歩いているんだが、樟葉は教室を出てからずっと浮かない顔だ。
さっきの一件を気にしているのか?
三枝も、何があったのか聞きたそうにその横顔をチラ見している。

静まり返った廊下から、武道館へ繋がる屋根付きの通路を歩いて到着。
俺達は、二試合目だからまだ時間はある。
靴箱に上履きを入れて、武道館の一番奥にクラスの陣営を構えた。

女子生徒は、早速固まってお喋りを始めている。
目の前の体育祭のことではなく、来月の学園祭のことらしい。
他のクラスに内容が漏れないよう、声は押さえ目だ。
それを横目に、俺は隣の樟葉をつつく。


「で、さっきのは、なんだったんだ、樟葉?」

「へ、えっ、あ、な、なんでもなぃ」

「そんな分けないだろう?」


身体を縮めて逃れようとするが、三枝もわざわざ樟葉に向き直して聞くモード。
挟まれた樟葉は、眉尻を下げて信用性の低い「大丈夫だよぉ」を繰り返す。

三枝が変異種Ωだったことを共有したからだろうか。
今まで他人と関わらないように生きてきた反動だろうか。
沈んでいる樟葉の力になりたいと思う気持ちが止まらない。


「俺達で力になれないことなのか?」
「んー、もしかして、そのアイパッチのせいなん?」


同時に口を開いたが、内容は全く違った。
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