ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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25 体育祭

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樟葉の番、芝浦も白色のタオルを手にやって来る。
去年は、芝浦と柴田のシバシバコンビが勝敗より小競り合いを始めて騒ぎを起こしていたが今年はヤマの群れに二人とも入っているからな。
二年生になってから、柴田が芝浦に絡む回数も減ったし大丈夫だろう。


「お前・・・それでずっとやるつもりか?」


芝浦は、注目を集めている樟葉が心配らしい。
周りを見渡し、興味本意で樟葉に手を出されないように威嚇する。
ここまで分かりやすい芝浦の番らしい行動を見るのは、初めてだな。

だが、樟葉はそれに気付いた様子はない。
「う、うん」と小さく返事をしながら、慌てて芝浦を避けて柴田の後ろに隠れてしまった。
これには、芝浦も困惑。


「お前・・・」

「僕は、大丈夫だよぉ。
あの、たぁちゃんも頑張ってね」


柴田を盾に、ボソボソと芝浦を応援。
いつも芝浦には積極的な樟葉らしくないな。
どれだけ芝浦がつれない態度をとっても、果敢に俺とヤマの真似をしようと迫っていることだってあるのに。
芝浦が何かあったのかと、その肩に手を伸ばそうとして柴田にパシッと払われる。

ビリッと、空気が震えた。
切り込むような鋭い眼差しで、柴田は樟葉を背に庇ったまま冷たく言い放つ。


「みこは、桜宮さんと三枝さんに任せておけば大丈夫でしょう。
今の高等部に、菊川さんの群れを相手にしようとする生徒はいませんよ」


だから、お前が出る幕じゃない。
みこに近寄るな。

ゆらゆらと、柴田のフェロモンがその身体から滲み出る。
これには、芝浦は苛立ちより面食らったようだ。
ここ最近、二人で会話することは無くても間に樟葉がいれば三人で笑うこともあったしな。
突然目の前に引かれた一線に、どう対応したら良いのか咄嗟に判断出来ない。
それは、俺も同じ。
一体、柴田はどうしたんだ?


「おい、揉め事か?」


教壇の前でバスケに出る生徒に囲まれていた担任が、騒ぎに気付いて声をかけてきた。
これには、ヤマが「大丈夫です」と答える。
言外に、柴田へここで騒ぎを起こすなと諌めているのが俺にも伝わってくる。

柴田は素直にヤマへは頭を下げるが、芝浦の探る目には答えない。
樟葉が小さく「ごめん」と呟くのが聞こえてきた。
それは、柴田にか、それとも芝浦にか?
三枝もどうしたら良いのかわからず、芝浦と柴田を見比べている。

だが、試合時間も迫って来たのでその場はうやむやになりそれぞれの試合会場に向かった。
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