ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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25 体育祭

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「かなちゃん、かなちゃん、早く行こぅ」

「みこちゃん、めっちゃやる気やなっ」

「去年は、すぐに当たっちゃったけど、今年はけぇちゃんに避ける練習をしてもらったんだぁ。
成果を見せるよぉ」


ショートホームルームが終わると、早速樟葉と三枝がやって来た。
樟葉は、三枝に向かって両肘を曲げ力こぶポーズで応えている。
俺はちょうど前の席から振り返ったヤマに両手を握られ、「カナも試合があるだろうけど、応援に来てほしいっ」と改めてお願いされ勿論だと頷いているところだった。

「相変わらずラブラブやなぁ」「ねぇー」と二人から暖かい目で愛でられてしまう。
ヤマに言われなくても、必ず応援に行くつもりだ。
それに、ヤマ専用の応援係に指名してきた女子生徒が同じソフトドッジボールのチームリーダー。
万一試合時間が重なっても、優先的に交替させて応援に行かせます宣言を事前にされているからな。
怪我等の不測の事態は除き、どの種目も一人試合時間15分の出場が必須。
あとは、最大人数の範囲内での交替に制限はない。

このクラス、かなり本気で優勝を狙っているので夏休み明けから熱気が凄いんだ。

樟葉の後ろにいる柴田に目を向けると、張り切る樟葉を心配げに見下ろしていた。
柴田もヤマと同じく得点力を期待されているから、樟葉と同じ種目には登録していない。


「みこ、無理しないでくださいよ?」

「大丈夫だよぉ!」


ニコニコ笑顔の樟葉は、いつも隠している左目に眼帯をして前髪をお揃いで購入したわんこピンであげている。
失明している左目の色が、漆黒の右目に比べて白みがかっているのを気にして今まで学校では前髪をあげたことは無かったんだが。
眼帯をしてまで右目の視界を確保するとは、樟葉もこの体育祭に本気なんだな。

その効果で、全方位跳ね放題の漆黒の髪に隠れた美少女ぶりが前面に出て、クラスの視線を朝から独り占めに近い状態だ。
近いと言うのは、唯一ヤマだけは興味を示してなかったからなんだが。
担任でさえ、教室に入ってきたとき、前列の樟葉に気付いて一時停止していたからな。

だが、樟葉はどうやらヤマと同じく周りの目は気にならないらしい。
ジロジロ見られていても、動じない。
席に座っているとき、後方から蜂の巣になるくらい見られていても気にする素振りがまるでなかった。
まぁ、神子として祭事に関わっているし慣れているんだろうな。
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