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24 体育祭 side 陸

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「ちぃーすっ、兄ぃ。
顔怖いよ?」

「海ちゃんと空ちゃんのお兄ちゃん、いつも怒ってるねって言われちゃってるよ?」


食堂から出た廊下で、海と空につかまる。
挟み撃ちにされ足を止めると、一歩離れた場所にいた誉と目があった。
そこに、ふわりと反射条件のように笑顔が浮かぶ。
俺には出来ねぇ芸当だな。


「こんにちは、笹部先輩」

「あぁ」


入学式から騒ぎを起こした田栗だが、親族公認で入籍前から番になっていたことも公表している。
それがなきゃ、田栗は未成年に手を出した淫行教師として今ごろ塀の中。
茅野学園も無傷ではいられねぇだろう。

田栗には、「高等部ではほどほどにしていてくれよ」と上がってから声をかけられたことがある。
波長が合うってのか?
珍しく、教師の中でコイツとは上手くやっていけるなと感じたαだ。

力はあるが、表には出さねぇ。
だが、争い事に慣れた雰囲気は隠さねぇ。
変わったαだとは思ったが、ロリコンの気もあったのか。

まぁ、ここまで育ちきっていたら中学生でも気にならねぇのか?
高校生には見えねぇ面構え。
α相手でもフラットな態度。
ここまで可愛いげがねぇのにΩとはな。


「「こらこら、兄ぃ。
ちょっとは笑顔を作りなよ!」」


コイツら、すっかり誉の護衛役が板についてんな。
誉の両脇に立ってキャンキャンうるせぇ。
やかましいとあしらい、さっさとその場から離れる。

残りの昼休みは、教室で一寝入りしようとしてんのに。
椅子に座ろうとしたら、稲葉がしつこく屋上にいこうと手を引っ張る。
何度も相手にするつもりはねぇ、たったそれだけのことがなんで理解出来ねぇんだ。


「陸ってばぁ」

「名前で呼んでんじゃねぇよ。
さっさとどっか行け」

「ひっどーぃっ」


ギュウギュウ背中に乗っかってくる胸、絡んでくる腕。
他のα女子の防波堤になるならと、放っておいたのが裏目に出始めてんな。
二年になってから、コイツしか相手をしてねぇからバランスが悪いのか?

無視して椅子に座ると目を閉じる。
目を閉じれば、どれだけ稲葉がまとわりついてきても、頭に浮かぶのは三枝のあの目だ。
三枝だけは、俺をあんな目で見てくることはねぇんだろうなと根拠もねぇのに思い込んでいた。
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