ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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24 体育祭 side 陸

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疼いた牙を親指で引っ掻いて気をまぎらわせていたら、隣を歩いていた柴田から「誰かとやりあうなら手伝いますよ」と言われた。
まぁ、確かにな。
屈服させたいα相手にも伸びるけどさ。


「そんなんじゃねーよ」

「そうですか?」


否定してんのに、全然信用してねぇな。
そういや、この柴田に前を歩いてる芝浦と樟葉の三人組。
コイツらが核に追加されたときは、どんだけかなちゃん中心の群れにするつもりなんだと松野と竹居の三人で菊川を囲んだんだよな。

「カナの近くにΩの友達がいた方が良いだろう」って、三枝を入れたときと変わんなさすぎる理由を悪びれもなく言ってくるから脱力したわ。
このままじゃ、かなちゃんのための菊川の群れになるんじゃねぇかな。

まぁ、三枝は入学式んときから面白いβだったから俺も退屈しなかったけどな。

群れに入る前から、かなちゃんや他のβに止められても、目が合えば挨拶もしてくるし、笑いかけても来る。
俺についてのあれやこれやを聞いてるはずなんだが、全然気にしてる素振りが無かった。

βから怯えられるのは、変異種Ωにしねぇための予防線にもなって都合が良かったし。
それが当たり前だったからな。
この反応は新鮮だった。

群れの人間以外から避けられても、こっちから追うことは無かったしな。
去年、俺の言葉が足りずに三枝を傷付けた時は参った。
俺からβへのつめ方がさっぱりわからねぇ。
結局、かなちゃんに間に入ってもらったしな。

水泳を教えんのも、コイツならと引き受けもした。
俺が睨んでも、ヘラヘラ笑って「もぉ、怖い顔せんといてぇやぁ」と返すようなヤツだった。

泣かせて、タイミングを見失ったあの時だって。
避けられはしても、怯えてはいなかった。
傷つけられた悲しい目を逸らされてはいたけど、謝った後は元サヤだったんだ。

だが、今は。

三枝は、俺に見慣れた目を向けてくる。
怖い、逃げろ、近寄るな。
腫れ物を扱うような怯えた視線。

周りの忠告を無視して、あっさり自分の懐に飛び込んできた三枝が。
あの一回で、消えてしまった。
懐に開いた空っぽの穴が塞がらねぇ。
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