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24 体育祭 side 陸

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「・・・三枝、コイツは止めとけ」


かなちゃんが腕を引いて、三枝に座り直すように促すが。
三枝は、それこそ不思議そうに「なんでなん?名前聞いたらあかんの?」とかなちゃんに尋ねている。
「入学式が始まるだろう」「え、まだ始まってへんし、しゃべってる人おるやん?まだ大丈夫やって」とかなちゃんの肩を軽く叩いた。

まるで、かなちゃんの親のフェロモンが見えてないかのような遠慮の無さだ。
これには、周りの方が更にざわついた。
俺も、深く腰かけていた背中が浮いた。
なんだ、このβ・・・面白いな。

桜宮財閥の御曹司相手に何をしているんだと、三枝よりも顔面蒼白になっているのはαの方だな。
まだかなちゃんのフェロモンは見たことがねぇが、親がこの強さなら優生αだと誰もが予測出来る。
加えて財力も地位もあるんだからな。
αなら、こんなに軽々しい態度は取れねぇ。

かなちゃんは、周りのざわつきを気にして声を潜める。


「関わらない方が三枝のためなんだ」


さすがのかなちゃんも、俺が近くにいんのに「αの中でも問題児」だの「野蛮なα」だの素直に吐けねぇからな。
三枝は、納得がいかずに「どういうことなん?」と首を傾げた。

かなちゃんが言葉を選んでいる間に、俺に向かって「で?で?」と背中越しに今度は目だけで名前を言うよう迫ってくる。
新しい学園生活の期待と希望に満ちた瞳には、陰りもなく。
羨ましいくらいに真っ直ぐで真っ白だった。


「笹部だ」


名乗るつもりなんか無かったんだが。
ツルリと考えるより先に押されて声が出ていた。
それまでも笑顔を絶やさなかった顔に、パーッと目の前で一段上の笑顔咲いた。

ザワッ

自分の前でこんな顔をするβに会ったのは初めてだった。
理由のわからない感情が揺らされる。


「笹部君、よろしくっ
背も高いし、格好えぇな。
αなん?
あんな、俺・・・」


気を良くした三枝が、屈託なく今度は俺に向かって話し掛けてくる。
だが、タイムアウト。
途中で入学式の始まりを告げるアナウンスが割り込んだ。

入学式が終わるのを見計らって、三枝は俺に何か言いたそうにしていたんだが。


「おい、さっさと行くぞっ」


三枝の背中を押して、かなちゃんが俺から距離を取るために連れていった。
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