ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

文字の大きさ
上 下
583 / 911
24 体育祭 side 陸

6

しおりを挟む
午前の授業が終われば昼休みがやってくる。
今日の日替わりは肉がいいな。
早朝バイトんときは、握り飯しか食べてねぇからこの時間は空きっ腹だ。

教科書を片付けている間に、窓越しに廊下を歩いていく菊川達の姿が見えた。
相変わらず、菊川のフェロモンが「俺の」「大好き」「宝物」と煩くて目立つ。
かなちゃんは慣れたのか、そんなフェロモン背負わされても前より堂々と歩いているけどな。

α女子の中には、未だに露骨に顔をしかめるヤツもいる。
自分が手に入れたかった菊川を、かっさらわれた上に侍らしてるようにしか見えないからな。
かといって、去年のフェロモンレイプに告白の全拒否、かなちゃんへのベタぼれっぷりを見せつけられてまだ諦めない身の程知らずはいねぇ。
菊川も、煽る気もねぇんならこんな強力なフェロモンつけんなよ。

もう出てきてるなんて、4組終わるのはぇーな。
ぼーっとしていたら間に合わねぇ。
急いで机に突っ込み席を立つ。

別に、一緒に行く必要もねぇし。
こんな、急ぐ必要もねぇし。
だいたい、いつもならぼーっとしてても、だ。
空いた扉から三枝がひょこっと顔を出して、「さーさーべー君っ、ご飯行こっ」と笑顔で誘ってきてたんだ。

けど。

先頭を歩いていた三枝が、チラッと窓越しにこっちを向いて、そんときに目まで合ったのにな。
ビクッと明らかに怯えた目を逸らして、足早に教室の前を通り過ぎていく。
それに気付いたかなちゃんからは、ジロリと睨まれるし。
菊川からは、なにしてんだ?と疑いの目を向けられるし。

・・・先週、俺がフェロモンぶつけたせいだよな。

廊下に出ると、三枝は松野と竹居に合流して笑顔で話しながら先を歩いていた。
わざわざ追いかける気もねぇーし、最後尾の柴田の隣を歩く。

・・・違うな、正直どうしていいのか自分でもわかってねぇから近寄れねぇ。

周りに怯えられるのは慣れている。
喧嘩を売られれば、囲んできた相手が敗北を認めるまで散々痛みつけてきた。
緩い縛りしかしない菊川の群れを侮り、絡んでくるヤツラを徹底的に潰してきた。

相手をしたαや目撃したβ、噂を聞いただけのヤツラからもずっと怯えた目を向けられてきたんだ。
中等部で俺とまともに話していたのは、幼馴染みの3人くらいだ。
媚びてくるα女子を除けば、キャンキャン突っかかってきたのもかなちゃんくらいだったしな。

高等部に上がるまで。
いや、三枝に話しかけられるまで。
俺にβが近寄ってくることも無かったんだ。
しおりを挟む
感想 961

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜

白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。 しかし、1つだけ欠点がある。 彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。 俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。 彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。 どうしたら誤解は解けるんだ…? シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。 書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

処理中です...