ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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24 体育祭 side 陸

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「おーっす、今日もお前ら元気良いなぁ」


ダッハッハと、豪快に笑って入ってきた担任の登場で小競り合いは終了。
三十路の体育教師は、この夏休みの間に結婚して新婚旅行も済ませたばかりの新妻だ。
旧姓が苗護(なえご)で名前が梨羅(りら)。
まぁ、見てくれはどうあれ、そのナエゴリラの名前と性格の荒々しさでクラス内じゃ影でゴリラと呼ばれている。
嫌われてる訳じゃなく、親しみを込めてらしいが。
本人が知ったらいい気はしねーわな。

姓が岩蕗(いわぶき)になっても、ゴリラっぷりは健在だ。
勢いよく閉じた扉が反動で戻ってすきま風が入ってくる。
扉の近くに座っていたβが、当たり前のように閉め直しにいった。

黙って立っていれば、α。
モデルとはまではいかなくても、そこそこ外見レベルは高いんだが。
サバサバした性格は、恐らく他のα女子とは合わなかったことだろう。
こんな混合の学園で教師をしているくらいだ。
茅野学園にいるα教師は変わり者が多い。

岩蕗になって変わったことは、飾り気のないジャージ姿にシュシュやヘアピンが加わり、化粧まで始めたことか。
鼻が利く俺にとっては、前の方がありがたいんだが。

なんでも、相手は元教え子で美容師らしい。
茅野学園の第一期卒業生。
卒業後の成人式に顔を出したらコクられ、迫られ、ゴールイン。
生徒会の檜山が岩蕗のダンナに憧れているとかで、夏休み明けに大騒ぎしていた。


「いよいよ、明日だっ
お前ら、手を抜くなよ?」


岩蕗は、ダンナに磨かれた顔でニヤリと笑う。
顔と台詞があってねぇ。
特に、と、念押しするようにフェロモンの応酬をしていたα女子をジロリと睨む。
席の並び替えで、俺の隣をβから奪った稲葉も担任に睨まれるのは今後の進路にも関わるからな。
大人しいもんだ。

体育祭は、生徒よりもこの体育教師が乗り気だからな。
上に立つ人間に従順なβは、うまいこと乗せられて、学園祭でも上位を狙う気でいる。

体育祭と学園祭の総合点が全校トップになれば、二週間カフェテリアの全メニューがフリーパス。
12月の最終登校日には、一足早く特製クリスマスケーキが1ホールついてくる。
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