ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

文字の大きさ
上 下
576 / 911
23 新生徒会

12

しおりを挟む
「海さん、空さん、顔色が優れませんよ。
大丈夫ですか?」


突然の兄の行動に途方にくれている双子は、互いに目配せしてまるでテレパシーで会話をしているようだったが。
田栗に声をかけられ、ハッと我に返ったようだ。
強ばっていた表情が緩み笑顔を作る。

尋ねた田栗の方が、よっぽど顔色が悪くないか?
唇が白いぞ。
海と空は、「「大丈夫っ」」と田栗に頷いて答えるが笹部のことが心配なんだろう。
海は、机越しに手を伸ばして笹部の置いていったお菓子の袋を手に取ると。


「ちょっと機嫌が悪かっただけだろーし、兄ィのことは気にしないでね」

「兄ィが迷惑かけちゃってごめんね」

「竹居センパイ、ホマレンをタグリンまで届けてくれる?」

「頼んでイーィ?
タグリンも、イーィ?」

「別に構わないぜ?」

「構いませんよ」

「「んじゃ、お先に失礼シマースッ」」


手を上げてさっさと退出。
双子の慌てぶりからすると、今日のこの場だけで収まる問題ではないのかもしれないな。
一体、何に過剰反応したんだ?


「笹部君、怖かったぁ・・・
急にどうしちゃったんだろう?」

「あ、αって、やっぱすごいんやな。
自分でこんなん感じんの、初めてやわ」


すっかり怯えている檜山先輩と三枝。
シバシバコンビで見慣れていても、あの二人は周りを巻き込むことは無いからな。

だが、三枝は初めてと言っているが、それは覚えてないだけだ。
一年生の水泳の授業で、俺が水球を当てられたときが一度目。
ヤマの怒りのフェロモンの余波を浴びて、怯えるより先にその場で失神してる。


「松野君らは、平気なん?」

「笹部の怒気や攻撃のフェロモンはそう珍しいものでもなかったからな。
三枝や先輩ほど精神的ダメージも無い」

「ゼロってわけでも無いけどね」

「そうなんやぁ」


相槌を打つ三枝の表情は暗い。
この場に残った誰よりも、動揺しているのが見てとれる。
自分がΩにした相手も気付かない馬鹿のことなんか、三枝がわざわざ気に病むことじゃないと思うが。
しおりを挟む
感想 961

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭

至宝のオメガ

みこと
BL
アドリア大陸一の軍事力と豊かさを誇るバートレット帝国。 隣接する小国のひとつであるサリエル公国は度重なる他国の侵略に頭を痛め、バートレット帝国に庇護を求めた。帝国は庇護の条件に、膨大な魔力と強力な戦闘魔法を持ったサリエル公国の王女ニケーアとの婚姻を要求し協定を結んだ。しかし輿入れしてきたのはニケーアではなく王子でオメガのルイーズだった。ルイーズには魔力もほとんどなく、戦闘魔法も使えない。「約束が違う‼︎」と憤る第二王子だがルイーズには他国に知られていない秘密があって…。 オメガバースです。オメガバースの説明はありません。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...