569 / 911
23 新生徒会
5
しおりを挟む
「三枝、大丈夫か?」
「う、うん、大丈夫。
ふたりに潰されるかと思ったわぁ~」
顔をあげて、力無く笑う三枝。
まだ海の胸の感触が残っているのか、くしゃくしゃになった後ろ髪をすく手はぎこちない。
笹部は三枝には苦笑いで、双子にはジロリと睨みをきかせた。
双子は肩を竦めつつ、気になるのか目線はチラチラ紙袋に注がれている。
笹部もつられ、手に持った紙袋に向けた目がピタリとそこで止まった。
どうやら、笹部も気になるようだ。
穴が開きそうなくらい熱心な視線に、三枝はちょっと嬉しそうだ。
俺の視線に気付いて、ヘヘッと照れ笑いを浮かべる。
それが、笹部にとって三枝が作ったものだからかどうかは怪しいところだが。
食べ物に変異種Ωが絡む家系の笹部にとって、家族以外の気持ちのこもった手作りの御菓子を安心して食べる機会は滅多にない。
昔、自分がβからΩに変えた子どもが三枝だと笹部は気付いてないし。
気になったところで、三枝に食べ物を奢ってしまっている笹部は三枝から食べ物を受け取ることはできないんだ。
笹部め、いいきみだと心の中で嗤ってやる。
少しくらい、三枝のことを意識してみろ。
笹部はスンと軽く鼻を鳴らし、皆の視線が集まっていることに気付いてようやく紙袋を三枝の前に返した。
双子はその場にしゃがみ、三枝を挟んで可愛くおねだりを始める。
αのプライドより、三枝の手作りの御菓子が上らしい。
「「三枝センパーィ、ちょうだいっ」」
「うん、ちょっと待ってな」
三枝は、ニコニコ笑いながら閉じていた紙袋を開けて、ひとつひとつ机の上に並べ始める。
動物柄の印刷された袋は透明で、中にパウンドケーキやクッキーがいくつも詰められているのが俺の席からも見えた。
袋は、オレンジのリボンでラッピングされていて、小さなメッセージガードがついている。
見た目も、市販のものと比べて遜色がない。
クッキーを教えてもらった時も思ったんだが、三枝は製菓の道に進めば良いんじゃないかと思うぞ。
双子は、机の高さに目線を合わせ、ガン見しながら袋が出てくるだけでもゴクリと生唾を飲み込んでいる。
目が怖いくらいに見開いているぞ。
まるで、獲物を狩るハンターのようで、三枝の手に飛びかかりそうで怖いんだが。
「う、うん、大丈夫。
ふたりに潰されるかと思ったわぁ~」
顔をあげて、力無く笑う三枝。
まだ海の胸の感触が残っているのか、くしゃくしゃになった後ろ髪をすく手はぎこちない。
笹部は三枝には苦笑いで、双子にはジロリと睨みをきかせた。
双子は肩を竦めつつ、気になるのか目線はチラチラ紙袋に注がれている。
笹部もつられ、手に持った紙袋に向けた目がピタリとそこで止まった。
どうやら、笹部も気になるようだ。
穴が開きそうなくらい熱心な視線に、三枝はちょっと嬉しそうだ。
俺の視線に気付いて、ヘヘッと照れ笑いを浮かべる。
それが、笹部にとって三枝が作ったものだからかどうかは怪しいところだが。
食べ物に変異種Ωが絡む家系の笹部にとって、家族以外の気持ちのこもった手作りの御菓子を安心して食べる機会は滅多にない。
昔、自分がβからΩに変えた子どもが三枝だと笹部は気付いてないし。
気になったところで、三枝に食べ物を奢ってしまっている笹部は三枝から食べ物を受け取ることはできないんだ。
笹部め、いいきみだと心の中で嗤ってやる。
少しくらい、三枝のことを意識してみろ。
笹部はスンと軽く鼻を鳴らし、皆の視線が集まっていることに気付いてようやく紙袋を三枝の前に返した。
双子はその場にしゃがみ、三枝を挟んで可愛くおねだりを始める。
αのプライドより、三枝の手作りの御菓子が上らしい。
「「三枝センパーィ、ちょうだいっ」」
「うん、ちょっと待ってな」
三枝は、ニコニコ笑いながら閉じていた紙袋を開けて、ひとつひとつ机の上に並べ始める。
動物柄の印刷された袋は透明で、中にパウンドケーキやクッキーがいくつも詰められているのが俺の席からも見えた。
袋は、オレンジのリボンでラッピングされていて、小さなメッセージガードがついている。
見た目も、市販のものと比べて遜色がない。
クッキーを教えてもらった時も思ったんだが、三枝は製菓の道に進めば良いんじゃないかと思うぞ。
双子は、机の高さに目線を合わせ、ガン見しながら袋が出てくるだけでもゴクリと生唾を飲み込んでいる。
目が怖いくらいに見開いているぞ。
まるで、獲物を狩るハンターのようで、三枝の手に飛びかかりそうで怖いんだが。
1
お気に入りに追加
1,441
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載


【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。



欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜
白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。
しかし、1つだけ欠点がある。
彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。
俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。
彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。
どうしたら誤解は解けるんだ…?
シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。
書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる