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22 夏休み side 命
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「けぇちゃん、いつもありがとぅ」
「いえ、どういたしまして」
関係者席に着く前に、僕の小さな掌をすっぽり包んじゃう大きなけぇちゃんの掌にキュッと力を込めてお礼を言った。
けぇちゃんは、「衛士として当たり前のことをしてるんだ」とは答えずに僕を見下ろして微笑んでくれる。
小さい頃は、ここまで差はなかったのに。
Ωな僕とαのけぇちゃんの差はどんどん開いていく。
でも、態度は全然変わらない。
初めて実物のたぁちゃんに会うために、撮影所に行きたいと行った僕にも着いてきてくれたよね。
御珠神社の元神子の僕が撮影所に入ることを周知して、危害を加える人間が近付かないようにってね。
大人のαとの交渉も、全部全部してくれた。
その間、隣で握っていた手が、緊張で震えていたの知ってるよ。
元神子だった僕は、中学まで特別児童でね。
保育園や学校には通ったことがなかったんだ。
けぇちゃんは、そんな僕に外の話をたくさんして勉強も教えてくれた。
・・・あんまり、その、苦手でね。
けぇちゃんをすっっごく困らせちゃってたけど。
勉強と言えば。
フフフッ、かなちゃんの教え方はスパルタで全然違うなぁ。
いっぱい写真を消されて悲しかったこと、怖い怖いかなちゃんの顔を思い出してる筈なのに笑顔が溢れちゃう。
かなちゃんや三枝君に出会えたのは、茅野学園に通ったからだよね。
それも、たぁちゃんと茅野学園に通いたいって言ったとき。
なんのためかを話したとき。
けぇちゃんが、「仕方ないですね」って優しく笑って着いてきてくれたからだよ。
んー、僕のわがままで茅野学園に通うことになってしまったたぁちゃんには、悪いことしちゃったなぁ。
勝手に番になって、勝手に進路まで決めて。
でも、優生学園だと、カメラを好きなときに撮らせてくれないって言われたからね。
優しい、優しい、けぇちゃん。
けぇちゃんに怒られたのは、あのときだけだね。
混んできたから僕の肩を抱き寄せて、周りに気を配りながら歩いてる横顔を盗み見る。
たぁちゃんと番になるって決めたとき。
あの一回だけ。
「いえ、どういたしまして」
関係者席に着く前に、僕の小さな掌をすっぽり包んじゃう大きなけぇちゃんの掌にキュッと力を込めてお礼を言った。
けぇちゃんは、「衛士として当たり前のことをしてるんだ」とは答えずに僕を見下ろして微笑んでくれる。
小さい頃は、ここまで差はなかったのに。
Ωな僕とαのけぇちゃんの差はどんどん開いていく。
でも、態度は全然変わらない。
初めて実物のたぁちゃんに会うために、撮影所に行きたいと行った僕にも着いてきてくれたよね。
御珠神社の元神子の僕が撮影所に入ることを周知して、危害を加える人間が近付かないようにってね。
大人のαとの交渉も、全部全部してくれた。
その間、隣で握っていた手が、緊張で震えていたの知ってるよ。
元神子だった僕は、中学まで特別児童でね。
保育園や学校には通ったことがなかったんだ。
けぇちゃんは、そんな僕に外の話をたくさんして勉強も教えてくれた。
・・・あんまり、その、苦手でね。
けぇちゃんをすっっごく困らせちゃってたけど。
勉強と言えば。
フフフッ、かなちゃんの教え方はスパルタで全然違うなぁ。
いっぱい写真を消されて悲しかったこと、怖い怖いかなちゃんの顔を思い出してる筈なのに笑顔が溢れちゃう。
かなちゃんや三枝君に出会えたのは、茅野学園に通ったからだよね。
それも、たぁちゃんと茅野学園に通いたいって言ったとき。
なんのためかを話したとき。
けぇちゃんが、「仕方ないですね」って優しく笑って着いてきてくれたからだよ。
んー、僕のわがままで茅野学園に通うことになってしまったたぁちゃんには、悪いことしちゃったなぁ。
勝手に番になって、勝手に進路まで決めて。
でも、優生学園だと、カメラを好きなときに撮らせてくれないって言われたからね。
優しい、優しい、けぇちゃん。
けぇちゃんに怒られたのは、あのときだけだね。
混んできたから僕の肩を抱き寄せて、周りに気を配りながら歩いてる横顔を盗み見る。
たぁちゃんと番になるって決めたとき。
あの一回だけ。
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