ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

文字の大きさ
上 下
563 / 911
22 夏休み side 命

14

しおりを挟む
「けぇちゃん、いつもありがとぅ」

「いえ、どういたしまして」


関係者席に着く前に、僕の小さな掌をすっぽり包んじゃう大きなけぇちゃんの掌にキュッと力を込めてお礼を言った。
けぇちゃんは、「衛士として当たり前のことをしてるんだ」とは答えずに僕を見下ろして微笑んでくれる。
小さい頃は、ここまで差はなかったのに。
Ωな僕とαのけぇちゃんの差はどんどん開いていく。

でも、態度は全然変わらない。

初めて実物のたぁちゃんに会うために、撮影所に行きたいと行った僕にも着いてきてくれたよね。
御珠神社の元神子の僕が撮影所に入ることを周知して、危害を加える人間が近付かないようにってね。
大人のαとの交渉も、全部全部してくれた。
その間、隣で握っていた手が、緊張で震えていたの知ってるよ。

元神子だった僕は、中学まで特別児童でね。
保育園や学校には通ったことがなかったんだ。
けぇちゃんは、そんな僕に外の話をたくさんして勉強も教えてくれた。
・・・あんまり、その、苦手でね。
けぇちゃんをすっっごく困らせちゃってたけど。

勉強と言えば。
フフフッ、かなちゃんの教え方はスパルタで全然違うなぁ。
いっぱい写真を消されて悲しかったこと、怖い怖いかなちゃんの顔を思い出してる筈なのに笑顔が溢れちゃう。

かなちゃんや三枝君に出会えたのは、茅野学園に通ったからだよね。

それも、たぁちゃんと茅野学園に通いたいって言ったとき。
なんのためかを話したとき。
けぇちゃんが、「仕方ないですね」って優しく笑って着いてきてくれたからだよ。

んー、僕のわがままで茅野学園に通うことになってしまったたぁちゃんには、悪いことしちゃったなぁ。
勝手に番になって、勝手に進路まで決めて。
でも、優生学園だと、カメラを好きなときに撮らせてくれないって言われたからね。

優しい、優しい、けぇちゃん。
けぇちゃんに怒られたのは、あのときだけだね。

混んできたから僕の肩を抱き寄せて、周りに気を配りながら歩いてる横顔を盗み見る。

たぁちゃんと番になるって決めたとき。

あの一回だけ。
しおりを挟む
感想 961

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

欠陥αは運命を追う

豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」 従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。 けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。 ※自己解釈・自己設定有り ※R指定はほぼ無し ※アルファ(攻め)視点

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜

白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。 しかし、1つだけ欠点がある。 彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。 俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。 彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。 どうしたら誤解は解けるんだ…? シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。 書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。

処理中です...