ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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22 夏休み side 命

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「俺とカナがリンゴ飴並んで一緒に買っとくよ」


うわっ

前を歩いていた菊川君が、急に振り返ってしかも話に入ってきたからビックリっ
バッチリ目もあってしまって、ぶわぁぁーっと全身が膨れ上がっちゃうくらいに興奮して頭が真っ白になってうわぁぁっうわぁぁっっうわぁぁーーーっっ

パンッと、意識が弾けとんでしまった。


「み、みこちゃん?!」

「みこ!」


ハッと気付いたときには、膝を折ったけえちゃんの腕の中で。
三枝君にギュウギュウ手を握られ、顔を覗きこまれていた。
あぁ、また気を失っちゃったのかなぁ。

道の真ん中で倒れてしまったから、見上げた視界の端に、何事か気にしながら通り過ぎてく人が見えた。
かなちゃんは、菊川君に後ろを向かせて背に隠しながら少し離れて待ってくれている。


「・・・フフフ、ごめんねぇ。
また、気を失っちゃったよぉ」


ふぅ、まだドキドキしてる心臓を押さえて深呼吸。
全身が熱い、ドキドキが収まらない。
慣れてきたかもって思っていたんだけどなぁ。
僕を神子から解放してくれた、大恩人の陽太様に直接会えてから菊川君への興奮と緊張が復活、うぅん、前よりもっと増えちゃってる。

だって、まさか、実物の陽太様に会えるなんて思ってなかったしっっ

頭では、陽太様と菊川君に血の繋がりがあって息子さんでってわかってるから、去年同じクラスになってから興奮して倒れていたんだけどね。
本当に本物の陽太様が目の前にいて、菊川君とその兄上がいてってなったら現実味が怒濤のごとく押し寄せてきちゃって。

陽太様は、世間からいろんなことを言われても前例の無いαと結婚することを発表して突き通して・・・本当に本当に陽太様のお陰で、今の僕があるんだ。
もし、陽太様が結婚されなかったら。
もし、Ωの地位が昔と変わらず虐げられるままだったら。

僕は、孕上と同じようにずっと御珠神社の中で神子として生きて、姉上が結婚する新しい宮司と番になって、次の神子を生んで死んでいくだけだった。
こんな風に、友達も出来ないし、外出だって許されない・・・

あぁ、御珠神社のすぐそばにいるからかな。
どうしても、感傷的になってしまう。
学校や菊川君のお家よりも、気持ちが昂ってグルグルいろんな感情が溢れてくる。


「みこちゃん、どっか打ったん?痛い?」


そっと、三枝がハンカチで僕の頬を拭ってくれて泣いていたことに初めて気付いた。
泣いちゃ、ダメだ。
笑わなきゃ、笑え、笑えっ

口の両端を無理矢理あげて、なんとか笑顔を作る。
でも、フフフって笑う前に三枝君に抱き締められて。
そのままボロボロ涙が止まらずに泣いてしまった。
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