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21 夏休み side 倭人

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カナから、このクッキーが完成するまでにあった出来事を詳しく聞いていたら木戸さんがタイミングを見計らって戻ってきた。
木戸さんは、会話の邪魔にならないようトレイに手早くまとめて持ち上げる。
俺とカナがクッキー作りを手伝ってくれたお礼を言ったら、「こちらこそ楽しかったですよ」と笑顔。
そのまま「今夜はこれで失礼いたしますね」と繋げて会釈をし静かに去っていった。


「ヤマ、俺達もそろそろ戻るか?」


カナは、その場に立ち上がって「ん~~~っ」と握った右手を持ち上げて伸び。
キュッと目を細めた顔も、その動作も猫みたいで可愛い。
夏休みだから、どれだけ夜更かししても大丈夫なんだけど。
南の離れに行った夜は、カナは気疲れしてしまうのか早めに寝たいみたいだ。


「うん、そうだな」


週末は、御珠神社の祭もあるし。
来週は俺の誕生日。
それが過ぎたら、あっという間に新学期になるんだろうな。
カナともっといろんなところに遊びにいって、カナの「初めて」を一番近くでもっと見たい!
カナと二人きりの時間は、あっという間に過ぎてくから何日あっても足りない。

カナと手を繋いで風呂場に向かう。
そう言えば、カナ、決めてくれたかな?
隣を歩く横顔を見下ろして尋ねてみる。


「カナ、行きたい学科決まった?」

「・・・」


あ、明らかに顔が強ばった。
こっちを見ようともしてくれない。
夏休み前に、来年のクラス編成の参考にするから進路について考えておけって言われて、カナにどこに行きたいか聞いてるんだけどまだ決まってないのかな?

カナは、俺に決めて欲しそうなんだけど、俺には特に大学で学ぶ目的も無いしな。
生徒会長もしたし成績も問題無いし、推薦枠でいろんな学科から選べるんじゃないかな。
その中に無くても、試験受ければ落ちることはないし。

聞かないフリなの?
困った横顔、その眉尻の下がった顔が可愛くて頬に掠めるような軽いキスを落とした。


「カナ、可愛いっ」

「・・・バカ」


空いていた右手で頬を押さえ、ポソッ呟くのも可愛い。
カナ、学校で同じことしたらキッて睨むんだけど、離れだと恥ずかしそうにする。
カナの存在が可愛いくてキスをしちゃうのか、照れてるカナが見たくてキスをしちゃうのか、わからなくなるくらいどのカナも可愛い。

俯いたカナの旋毛にもキスして、驚いて顔をあげたところを腕に閉じ込めてそのまま抱き上げる。
今夜は早く寝た方がいいんだろうなってわかってるんだけど、ムリ。
だって、カナが可愛いから。
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