ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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21 夏休み side 倭人

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口の中で砕けたクッキー生地に、溶けた飴が絡まり濃厚なストロベリーの香りが広がる。
なんか、面白い味覚と触感だな。
咀嚼しながら、もう一枚手に取って表裏をじっくり観察。
星型に抜かれたところは、黄色い飴が隙間なく埋められていてガラスのように照明の光をこちら側に通している。
見た目も面白い。

カナに美味しいと言ってからそれを伝えたら、フフッと得意気に笑って教えてくれた。
俺がこのクッキーを初めて食べて、知らなかったのが伝わっていたからかな。


「それは、ステンドグラスクッキーと言う種類らしい。
俺もな、初めて食べたんだ!
三枝が材料も用意してくれて、作り方を教えてくれたんだが・・・三枝は、小さい頃から料理を作っていてな。
俺よりも手際が良くて・・・」


不意に、何かを思い出したカナは口元に手を当ててクスクス笑い出す。


「樟葉はな・・・初めて台所に立ったらしい。
見にくいだろうと、調理台の側にお立ち台まで用意してもらっていたんだが、計量した粉は床にぶちまけるし、生地を入れていたボウルはひっくり返すし、せっかく抜いた生地をもう一度練り込んでしまうし。
焼いている間、三人でどじっ子の御約束を全て制覇したんじゃないかって大笑いした」


ニコニコ笑うカナは楽しそうで、見ているこっちも笑顔になる。
はー、カナってなんて可愛いんだろう。
こんな風に、ニコニコ笑うカナをたくさん見れて嬉しい。

もう一枚口に入れたら、今度はサクッと砕いた飴の部分はレモン味だった。
クッキー生地は甘さも控えめになっているし、味の邪魔にならない。
ストロベリーをかき消し、甘酸っぱさが広がる。

まぁ、三枝が料理をしていたのは笹部が関わるからだろうな。
カナが、そこまで結びつけずに純粋に三枝の料理スキルを誉めているってことは、そこまで詳しく聞いてないからか?

笹部にとって、相手に食べさせる以上に好きな人間から食べ物を貰う行為は特別なんだと聞いている。
相手を変異種Ωにする危険を孕んでいても、差し出されたら抗えずに受け取ってしまう魅惑的な行為。

それが相手の手作りなら、その特別さはとんでもないだろう。

自分の息子をΩに変えられたのに、そこまで相手に合わせて仕込んでいるとか・・・
三枝の両親の考えは、俺には全く理解が出来ない。
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