ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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21 夏休み side 倭人

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兄貴が後から遥馬さんがこの部屋を準備していたなんて知ったら、俺が手伝わせたんじゃないかとか、俺の行動が遅いからだとか。
兎に角、理由を作ってこっちが絞られるのは目に見えている。
こんなときは、さっさと自分から報告しにいった方が被害は少なくて済む。

いくら遥馬さんが快諾していても、俺の群れのことで場所も菓子も提供するはめになってる兄貴の周りは地雷だらけだ。
取り除けるところは、早めに取り除いて誤解されないようにしておきたい。

兄貴と俺にはそれほどαとしての力の差は無いし、今は母さんの群の中にいるからぶつかっても調停が入る。
それに、こっちもカナが遥馬さんの話し相手として日常的に顔を出すように取り計らってるし。
そこまで下手に出なくても良さそうなんだけど。

本能でかなぁ。
兄貴との一対一の激突は、避けた方が良いとわかってんだよな。
遥馬さんが関わった時の、兄貴の執念深さと執拗さの恐ろしさは俺が想像している以上に凄そうだ。

遥馬さんには、台布巾と飲み物を持ってくるよと名目をつけてキッチンに戻った。
ノックを三回。
「なんだ?」と不機嫌そうな声が聞こえてきた。
作業中か?

握りこぶし分だけ開けた扉の影から、そーっと中を覗けば・・・兄貴は真剣な顔で、冷ましたタルトに粉砂糖を振りかけていた。


「あ、あのさっ
客間の準備に行ったら、遥馬さんが先に始めてくてれたから途中で引き継ごうと思うんだけど、いいかな?
あと、遥馬さんにオレンジジュース持っていこうかと思ってるんだけど」

「・・・無茶をしないように、お前はハルを見張っていろ。
あとは俺が焼いておく」


兄貴、淡々と話している風だけど。
苦渋の決断並みに眉間に皺が寄ってるぞ。
本心では、キッチンを俺に任せて自分が客間に行きたいんだろう。

これは、また何かあったな。
うわぁ、今日の兄貴はヤバそう。
三枝が兄貴に話し掛けないように、何がなんでも話を進めないとな!

遥馬さんは全然普通だったから、きっと何気無い一言に兄貴が勝手に傷付いてるんだろう。
あんまりこの二人に関わることがなかったし、ひたすら兄貴が遥馬さんを大事にしてることしか分かってなかったんだ。

俺にとって兄貴は、姉貴同様、他人の意見なんか寄せ付けない孤高の自立したαのイメージ。

だったんだ、けど。

蓋を開けてみれば、遥馬さんが最強過ぎる・・・
兄貴がこんなに凹むことがあるのかと、毎回遥馬さん絡みでは驚かされる。
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