ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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20 夏休み side 翔

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三枝先輩の練習する姿をギリギリまで見守る。
昨日よりも、シュートが決まらず集中出来ていないみたいだ。
先生から名指しで注意されると、その時は我に返ってるみたいだけど・・・大丈夫だろうか?
最後に全員で円陣を組み、全体ミーティングが終わるとボールを片付けながら落ち着かない様子でチラチラ俺を見上げて・・・

なんだろう?

手を振り返すとか、そう言ったことを期待されているようには見えないな。
何か、話したいこととか、気になることがあるのかな?
気になって、指で下を指しここから降りて近くにいくとジェスチャー。
それを見た三枝先輩の顔が、パッと明るくなった。

ドキンッ

それだけで、驚くほど高く心臓が音をたてる。
自分が、三枝先輩の気持ちを上げるきっかけになれたことか嬉しい。
試合前に、部外者の俺に出来ることなんてあるんだろうか。

階下の部員がぞろぞろ試合コートへ移動するのと合わせて、俺も動いた。
階段を掛け降りて走ったけど、通路に残っていたのは三枝先輩だけだった。
試合前の貴重な時間を無駄にさせてはいけないのに。


「すみません、三枝先輩、
お待たせしてしまって」

「ううん、桂木君。
そんなん、こっちもごめんな?
二階席にまた戻らなあかんのに」

「大丈夫ですよ。
あの、それで何か用事があったんじゃ・・・」


三枝先輩は、これに真剣な表情で大きく頷いた。
とても大切なことのようだ。


「あんな、実はうちのおかんが今日来てんの、俺知らんかって言えてへんことがあってな?
ほんまに、ほんまに桂木君には悪いんやけど・・・スマホも試合終わるまで預けてるし、伝えて欲しいことがあんねん」


お母さんに?
わざわざ試合前に伝えたいことって・・・想像も出来なくて「伝えますよ」とだけ応えた。
三枝先輩は、「ありがとうっ、助かるわっ」と目を輝かせる。

もうそれだけで、俺には良いことにしかならないです!
悪いことなんてなにもないです!

緩みそうになった口元を引き締めた俺に、三枝先輩から試合中と変わらないくらい真剣な真剣な顔で不思議な伝言を預かった。


「ほなな、いらんこと言わんといてって言って貰える?」
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