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20 夏休み side 翔

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ロータリーで車を降り、父さんに礼を言って別れる。
父さんは、俺がこの茅野学園に通い続けたいと話したとき、母さんや佳代さんみたいに真っ向から反対はしなかった。
俺が三枝先輩のことが好きだと家族に打ち明けたときも、静観してくれていた。

子どものことに興味がないのか?と不安になることもあるけど、こうやって送迎をしてくれたりする。
実は、三枝先輩のことがあってから、父さんが実はかなり懐が深いんじゃないかと見直すきっかけになって、俺から話しかけることが増えた。
それまでは、こういう人なんだと諦めて、俺と父さんの間に会話が挨拶程度しかなかったんだよね。
今朝も、今日の試合が如何に難しいか、試合中の三枝先輩のことを話しても、相槌や短い感想をくれるし。

三枝先輩のおかげで、いろんなことが毎日楽しい。

ロータリーには送迎バスが到着していて、既に二号車に乗り込んでいた女子生徒から手を振られた。
バスの中で、今日は昼からの試合なんだけど。
横断幕を広げたり、楽しそうだ。

ヒラヒラと、愛想よく手を振り返して自分はその前を通りすぎ一号車へ向かう。


「おはよーございますっ」


受付をしてくれている後援会長に挨拶をすると、名前を言う前に出欠簿に○を記入。
後で食べなさいと小袋のお菓子を渡された。


「ありがとうございます」


「どういたしまして。
あぁ、今日はあの子のお母さんが来てるわよ」


ニヤッと笑われ、ドキッと勢いで心臓が止まりそうなくらい高鳴った。
あ、あの子のお母さんって・・・三枝先輩の?
咄嗟に言葉が出てこなかった俺に、ぶっと遠慮なく噴き出すバスケ部後援会会長。
この人は、三年生と一年生部員のお母さんで、初日の挨拶では一番俺に質問を投げてきた人だ。
場を盛り上げるのが上手くて、地域でも役員を買って出るくらいバイタリティーに溢れている。
αの俺に対しても、遠慮なく話し掛けてくれるので、後援会の人とも打ち解けやすくなったしありがたいんだけど。


「αの子が、βの子を尊敬してるとか、本気かなぁと思っていたけど。
うんうん、その顔見たら本気で尊敬してるのね。
昨日までこんな緊張した桂木君、見たことかなかったもん」


クククッと、楽しそうに笑う。
あぁ、完全に面白がられてるな。
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