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19 夏休み side 陸

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三枝は、デザートのアイスクリームを食べ終わり、満足した途端に俺の顔を見て「あぁ、あ、あの、ごめんっ、ほんまに今日はなんかもぉごめんっ」と両手を合わせて謝ってきた。
急にここに来るまでのことを思い出したらしい。

着替えてから、グズグズ言って落ち込んでる三枝にたまりかね、ここまで俺が引っ張って連れてきたしな。
俺としては、自分が与えた飯を食べる三枝を眺め、自分の腹も膨れ、それまでのことなんかもうどうでも良いことになってる。
わざわざほじくりかえす気もねーから、「気にすんな」で終わらせる。


「はぁー、俺、笹部君に格好悪いとこばっか見せてんなぁ」


三枝は、溜め息をついてからストローに口をつけ、オレンジジュースをコクンと飲み込み。
ふにゃぁと幸せそうに味わっている。
落ち込んだり、満足したり、忙しいヤツ。


「今さらだろ」


どんだけ金づちぶりを俺の前で披露してんだよ。
ハッと嗤ったら、急に三枝が真剣な面構えで俺を見てきた。


「笹部君っ」


視線逸らしてばっかだったのに、突然なんだ?
落ち込みからのこの勢いの良さとか、気味が悪い。
悪い予感しかしねーんだが。


「なんだよ?」

「来週から、インターハイの試合があんねんっ
今年な、去年の雪辱を晴らしてβ限定高校総体に出場出来んねん。
去年、笹部君らに教えて貰ってから俺も試合にちょっと出して貰えるようになってな!
スタメンは無理かもしれんけど、絶対試合には出るから見にきてくれへん?!」

「はぁ?
なんで俺が・・・」


やけに鼻息は荒いが検討違いだ。
俺がなんでわざわざそんなもんを見に行かねーといけねーんだよ。
断ろうとしたら、じわり、と。
三枝の目に涙が溜まる・・・だぁーーーーーっ


「わかった、わかった!
バイトが無い日で、お前が勝ち残ってたらな」


俺の方から顔を背け、ヒラヒラ手を振って投げやりに答える。
コイツ、わざと泣き真似してるとかじゃねーだろうな。
「ありがとうっ、俺、めっちゃ格好良いとこ見せるからっっ」とヤル気に燃える声が聞こえてきたが俺は頭を掻いて答えなかった。
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