ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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19 夏休み side 陸

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去年の学園祭で、うっかりコイツから受け取ったチョコレートを食べたことがあった。
俺を怖がりもせずに、むしろその頃から水泳を教えていたりでこっちは群れの一員として仲良くしていたつもりだったからな。

食べ物のやり取り成立で、Ωにしたんじゃねーかと騒ぎが一段落してから気付いて肝を冷やした。

けど。

あの日から三枝は高熱で倒れることもなく、しばらく様子を見たがいつも通りケロッとしていた。
チョロチョロ俺の周りを彷徨くし、少しは好かれてんのかとこっちが勘違いしていただけだった。

このときハッキリしたことは、三枝にとって俺は好意を向ける対象じゃねーことだ。

別に、期待して物を与えていたわけじゃねーし。
また俺のうっかりで、βをΩにしなくて良かったじゃねーかと喜ぶところ。
そう、むしろ喜ぶところ、だったんだが。
妙にイラついて、イラつきが収まってないときに手作りケーキを渡そうとする無神経さにあんな言い方になった。
こっちの事情を全部話すわけにもいかねーし、仕方ないんだけどな
だが、泣くとは思ってなかった・・・微塵も思ってない相手に断られただけで泣くか?
手におえねーわ。

どんだけなついたふりをしていても、三枝は俺のことをαだと怯えて見てるか、ただの群れの一員と割りきってるかくらいしかねーのにな。
そのくせ、泣いて無視してこっちを掻き回してくる。
βとは、こんだけ近い距離で接したことは・・・アレ以来避けてたからな。
正直よくわからねー
分からなさすぎるが、コイツに泣かれるのは苦手だ。


「ご、ごめんっ
めっちゃビックリしてっっ」


俺から距離を保ったまま、ペットボトルを挟み手を合わせて謝ってくる三枝。
学園祭の後に、同じように熱を測ってたことがあったが、ここまで拒否されてなかった。
あの、俺に好意を持っていないとハッキリしたときより、どうやら嫌われているらしい。

自嘲し、さっさと背を向ける。

嫌いな相手にわざわざ水泳を教わる、ねぇ。
一年のαに頼めばいーじゃねーか。
本当に、コイツに関しては何考えてんのかさっぱりわからねーわ。
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