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18 運命の人
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遥馬さんの声が、今度はずっと拒否していた清人さんの耳まで届いたようだ。
清人さんは、その答えを聞いて大袈裟なくらい深く息を吐いた。
そのまま指先から力が抜けて、遥馬さんの肩からだらりと手が落ちる。
やっと、遥馬さんが自由になった。
「あの、清人、本当に本当にごめんなさい。
理由がわからなくて、ずっとイライラしてて」
俯いた清人さんの顔を見上げ、一生懸命に謝る遥馬さん。
自由になった分を埋めるように、自分から近づいていく。
「ごめんなさい」を繰り返して、清人さんの顔を挟むように手を伸ばす。
清人さんは、甘えるようにその掌に頬を擦り寄せた。
ヤマと俺は、清人さんの重苦しい空気が緩和されて一安心。
だが、ヤマは足に力が入らないらしく、立つことは諦めてその場に腰を下ろしてしまった。
「そんなに、酷かったのか?」
「酷かった!
今までで最悪に酷かったんじゃないかな・・・全身にまとわりついてきて、力任せに絞られてくっていうか。
かなり気力を持ってかれてる。
瞬間的な攻撃力は低いんだけど、じわじわ四方から蝕まれてくのが気持ち悪くって。
兄貴は、遥馬さんが関わると本当にヤバイ」
逆プロポーズ後に結婚して、落ち着いたと思ったんだがなぁ・・・嫌いという言葉が、清人さんにはよっぽど堪えたのか。
直接本人に尋ねる勇気もなく、陽太さんから聞いていたしな。
お疲れ様、とヤマの頭を撫でる。
負担にならなければ、抱き締めてその優しさを労いたい。
ヤマが清人さんの八つ当たりのようなフェロモンに本気で抵抗していたら、きっと俺はこの場にいられない規模の兄弟喧嘩が始まってたはずだ。
ヤマは、俺に笑いかけてから諦めた顔で清人さんの横顔を眺めている。
一方の清人さんは、その視線にすら気付かない。
ヤマの受けたダメージなんて、清人さんには些細なこと、いや、無いも同然なんだろうな。
全くこちらを見ずに、遥馬さんに「ハル、名前を呼んで」と甘い声を響かせて。
顔を近づけ、鼻先で遥馬さんの鼻を擽っている。
さっきまでと、別人のように熱を帯びた視線に傍観者の俺もゾクリと背筋が震えた。
「清人?」
「ん~ん、ソレじゃない。
ね、俺を安心させて?」
「え・・・こ、ここで?」
「ハル、お願い」
ヒソヒソ話してますが、清人さんと遥馬さんのすぐ近くにギャラリーが三人もいますよ。
丸聞こえですよ。
これは、完全に見せつけられてるぞ。
清人さんは、その答えを聞いて大袈裟なくらい深く息を吐いた。
そのまま指先から力が抜けて、遥馬さんの肩からだらりと手が落ちる。
やっと、遥馬さんが自由になった。
「あの、清人、本当に本当にごめんなさい。
理由がわからなくて、ずっとイライラしてて」
俯いた清人さんの顔を見上げ、一生懸命に謝る遥馬さん。
自由になった分を埋めるように、自分から近づいていく。
「ごめんなさい」を繰り返して、清人さんの顔を挟むように手を伸ばす。
清人さんは、甘えるようにその掌に頬を擦り寄せた。
ヤマと俺は、清人さんの重苦しい空気が緩和されて一安心。
だが、ヤマは足に力が入らないらしく、立つことは諦めてその場に腰を下ろしてしまった。
「そんなに、酷かったのか?」
「酷かった!
今までで最悪に酷かったんじゃないかな・・・全身にまとわりついてきて、力任せに絞られてくっていうか。
かなり気力を持ってかれてる。
瞬間的な攻撃力は低いんだけど、じわじわ四方から蝕まれてくのが気持ち悪くって。
兄貴は、遥馬さんが関わると本当にヤバイ」
逆プロポーズ後に結婚して、落ち着いたと思ったんだがなぁ・・・嫌いという言葉が、清人さんにはよっぽど堪えたのか。
直接本人に尋ねる勇気もなく、陽太さんから聞いていたしな。
お疲れ様、とヤマの頭を撫でる。
負担にならなければ、抱き締めてその優しさを労いたい。
ヤマが清人さんの八つ当たりのようなフェロモンに本気で抵抗していたら、きっと俺はこの場にいられない規模の兄弟喧嘩が始まってたはずだ。
ヤマは、俺に笑いかけてから諦めた顔で清人さんの横顔を眺めている。
一方の清人さんは、その視線にすら気付かない。
ヤマの受けたダメージなんて、清人さんには些細なこと、いや、無いも同然なんだろうな。
全くこちらを見ずに、遥馬さんに「ハル、名前を呼んで」と甘い声を響かせて。
顔を近づけ、鼻先で遥馬さんの鼻を擽っている。
さっきまでと、別人のように熱を帯びた視線に傍観者の俺もゾクリと背筋が震えた。
「清人?」
「ん~ん、ソレじゃない。
ね、俺を安心させて?」
「え・・・こ、ここで?」
「ハル、お願い」
ヒソヒソ話してますが、清人さんと遥馬さんのすぐ近くにギャラリーが三人もいますよ。
丸聞こえですよ。
これは、完全に見せつけられてるぞ。
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