ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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18 運命の人

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陽太さんは、手元も見ずに目当てのインカムを装着すると、そこに向かって終わりを告げた。


「今日は入れなくなった。
またな」


その言葉がリアルタイムで画面に流れる。

『土竜:今日は入れなくなった。またな』

それに反応し、一斉にブーイングや悲しいを表す顔文字が画面を埋め尽くしたが、陽太さんはインカムを外してコントローラを操作。
画面の電源を切ってしまった。


「最近は、eスポーツで金を稼ぎたいヤツラといろんなソフトで遊んでんだよ。
澪がどこでどう動いたのか知らねーけど、菊川物産で専用チャンネル開いてさ。
ΩとΩの人権に好意的なβやαを対象にいろんな企画してんだよ。
開発前の試作協力やゲーム順位で溜まるポイントと、生活用品を交換出来る半ば慈善事業も始め出してな。
俺が一人でその辺を彷徨かないように、この遊びをあの手この手で勧めてくんだよ。
まぁ、こんなネット環境が整ってるとこにいるΩより、もっと底辺にもなんか出来ないかとか、そこのメンバーと直接話せるしな。
結構面白い」


陽太さんは、コントローラを軽く振って「興味が出たら、いつでもどうぞ」と言ってくれたんだが。
正直、ゲームはしたことがないからな。
「機会があれば」と答えるに留めた。


清人さんを窓際のソファーに座らせると、ヤマは俺の顔を見て走ってきた。
これ以上、清人さんの近くにいるのが怖いのだろうか?
顔がひきつっている。
遥馬さんは、居心地悪そうに扉の近くで立ち止まったまま。

暫くしてノックの音が響き、陽太さんは遥馬さんを連れて出ていってしまった。
清人さんは、遥馬さんが出ていったことも気付いていないのか背凭れに身を預けて泣き続けている。
こんなに弱い人だったのか。

どこも見ていない空虚な瞳から、ポロポロ落ちて頬を流れる涙は刹那に消え行く幻のよう。
だが、コロコロ流れて真珠になってもこの人だったら不思議じゃない。

ヤマは、俺を背後から抱き締めて深く唸る。
かなり疲れてるな。
大丈夫か?
ポンポンと労いの意味も込めて、その腕に軽く触れた。
ヤマは、キュッと腕に力を込めた。
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