ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

文字の大きさ
上 下
485 / 911
18 運命の人

18

しおりを挟む
菊川家に来てから一年以上経つが、すぐに東の離れをヤマと使うことになったのでこの屋敷の全容は掴めていない。
番契約を結ぶために、父さんと澪さんと飛鳥さんが話をした客間と、薬が効いてくるまで控室として通された部屋。
あとは、ヤマに担ぎ込まれ18日間閉じ込められていた個室と、貢物で溢れた飛鳥さんの個室。
それに、トイレと食堂くらいしか出入りしていない。

今日まで、陽太さんの部屋がどこにあるかも知らなかった。

Ω界のシンデレラ、陽太さんの部屋に入ることになるなんてな・・・感慨深いというより、今も勇ましく菊川家を影で支えている陽太さんは憧れの存在だから、気持ちが益々浮わついてしまう。

階段を上がり廊下を進んでいくと、陽太さんは俺に断りを入れてから清人さんを担いだヤマの横をすり抜けていった。
その先の、木製の重厚な扉を開けて中に招き入れられる。

カーテンの敷かれた部屋は薄暗く、灯りがついて始めて中の様子を見ることが出来た。
一番最初に目に飛び込んで来たのは、壁に取り付けられたヤマの身長を上回る大きな液晶テレビ。
画面の中では、男性と女性のキャラクターが戦い、技や戦い方への賛否テロップが次々流れては消えていく。
テレビ画面が見易い場所に設置された机の上には、インカムや大きなヘッドホンと数種類のコントローラ。
食べ掛けのお菓子や飲み掛けのジュースがところせましと並んでいた。

座り心地の良さそうな厚みのある回転椅子の下は、攻略本やメモが散らばっていて、他が綺麗に整頓されているからその一帯の荒れ具合が目立つ。
あれでは、せっかくのキャスターも意味がなさそうだ。
動くスペースがない。

・・・ここが、陽太さんの部屋か。
想像も出来なかったが、したところで俺の頭では絶対にここには行き着かないな。
なんだろう、想定外過ぎる。


「あ"ーーー、桜宮さん、驚いたろ?
澪のヤツが、αと二人きりで会うな、不特定多数のαやβと一人で会うなってうるせーからさ。
澪や飛鳥が捕まらない暇なときは、敷地ウロウロしてるか、ネットで遊んでんの。
顔を晒す公式試合には一回も出たことないけど、この格闘ゲームだったら世界ランカーもフルボッコに出来るくらいやり込んでる」


陽太さんはそこまで笑いながら話すと、机の配置は頭に入っているんだろう。
俺の目を見たまま、山の中から一回でインカムを持ち上げた。
しおりを挟む
感想 961

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

欠陥αは運命を追う

豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」 従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。 けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。 ※自己解釈・自己設定有り ※R指定はほぼ無し ※アルファ(攻め)視点

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜

白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。 しかし、1つだけ欠点がある。 彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。 俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。 彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。 どうしたら誤解は解けるんだ…? シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。 書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。

処理中です...