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18 運命の人
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菊川家に来てから一年以上経つが、すぐに東の離れをヤマと使うことになったのでこの屋敷の全容は掴めていない。
番契約を結ぶために、父さんと澪さんと飛鳥さんが話をした客間と、薬が効いてくるまで控室として通された部屋。
あとは、ヤマに担ぎ込まれ18日間閉じ込められていた個室と、貢物で溢れた飛鳥さんの個室。
それに、トイレと食堂くらいしか出入りしていない。
今日まで、陽太さんの部屋がどこにあるかも知らなかった。
Ω界のシンデレラ、陽太さんの部屋に入ることになるなんてな・・・感慨深いというより、今も勇ましく菊川家を影で支えている陽太さんは憧れの存在だから、気持ちが益々浮わついてしまう。
階段を上がり廊下を進んでいくと、陽太さんは俺に断りを入れてから清人さんを担いだヤマの横をすり抜けていった。
その先の、木製の重厚な扉を開けて中に招き入れられる。
カーテンの敷かれた部屋は薄暗く、灯りがついて始めて中の様子を見ることが出来た。
一番最初に目に飛び込んで来たのは、壁に取り付けられたヤマの身長を上回る大きな液晶テレビ。
画面の中では、男性と女性のキャラクターが戦い、技や戦い方への賛否テロップが次々流れては消えていく。
テレビ画面が見易い場所に設置された机の上には、インカムや大きなヘッドホンと数種類のコントローラ。
食べ掛けのお菓子や飲み掛けのジュースがところせましと並んでいた。
座り心地の良さそうな厚みのある回転椅子の下は、攻略本やメモが散らばっていて、他が綺麗に整頓されているからその一帯の荒れ具合が目立つ。
あれでは、せっかくのキャスターも意味がなさそうだ。
動くスペースがない。
・・・ここが、陽太さんの部屋か。
想像も出来なかったが、したところで俺の頭では絶対にここには行き着かないな。
なんだろう、想定外過ぎる。
「あ"ーーー、桜宮さん、驚いたろ?
澪のヤツが、αと二人きりで会うな、不特定多数のαやβと一人で会うなってうるせーからさ。
澪や飛鳥が捕まらない暇なときは、敷地ウロウロしてるか、ネットで遊んでんの。
顔を晒す公式試合には一回も出たことないけど、この格闘ゲームだったら世界ランカーもフルボッコに出来るくらいやり込んでる」
陽太さんはそこまで笑いながら話すと、机の配置は頭に入っているんだろう。
俺の目を見たまま、山の中から一回でインカムを持ち上げた。
番契約を結ぶために、父さんと澪さんと飛鳥さんが話をした客間と、薬が効いてくるまで控室として通された部屋。
あとは、ヤマに担ぎ込まれ18日間閉じ込められていた個室と、貢物で溢れた飛鳥さんの個室。
それに、トイレと食堂くらいしか出入りしていない。
今日まで、陽太さんの部屋がどこにあるかも知らなかった。
Ω界のシンデレラ、陽太さんの部屋に入ることになるなんてな・・・感慨深いというより、今も勇ましく菊川家を影で支えている陽太さんは憧れの存在だから、気持ちが益々浮わついてしまう。
階段を上がり廊下を進んでいくと、陽太さんは俺に断りを入れてから清人さんを担いだヤマの横をすり抜けていった。
その先の、木製の重厚な扉を開けて中に招き入れられる。
カーテンの敷かれた部屋は薄暗く、灯りがついて始めて中の様子を見ることが出来た。
一番最初に目に飛び込んで来たのは、壁に取り付けられたヤマの身長を上回る大きな液晶テレビ。
画面の中では、男性と女性のキャラクターが戦い、技や戦い方への賛否テロップが次々流れては消えていく。
テレビ画面が見易い場所に設置された机の上には、インカムや大きなヘッドホンと数種類のコントローラ。
食べ掛けのお菓子や飲み掛けのジュースがところせましと並んでいた。
座り心地の良さそうな厚みのある回転椅子の下は、攻略本やメモが散らばっていて、他が綺麗に整頓されているからその一帯の荒れ具合が目立つ。
あれでは、せっかくのキャスターも意味がなさそうだ。
動くスペースがない。
・・・ここが、陽太さんの部屋か。
想像も出来なかったが、したところで俺の頭では絶対にここには行き着かないな。
なんだろう、想定外過ぎる。
「あ"ーーー、桜宮さん、驚いたろ?
澪のヤツが、αと二人きりで会うな、不特定多数のαやβと一人で会うなってうるせーからさ。
澪や飛鳥が捕まらない暇なときは、敷地ウロウロしてるか、ネットで遊んでんの。
顔を晒す公式試合には一回も出たことないけど、この格闘ゲームだったら世界ランカーもフルボッコに出来るくらいやり込んでる」
陽太さんはそこまで笑いながら話すと、机の配置は頭に入っているんだろう。
俺の目を見たまま、山の中から一回でインカムを持ち上げた。
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