ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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18 運命の人

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菊川家の食堂。
三枝家から帰宅が遅れてしまい、ヤマと話す間もなくここに来たんだが。
案の定、事情を知る俺には、扉を開けた途端に清人さんの背中から冷気が漂って見えるくらい清人さんと遥馬さんの様子がおかしい。
対象をαに絞ったフェロモンも流れているのか、ヤマは食堂の扉の前で「入りたくない」と悲壮感たっぷりだった。

澪さんと飛鳥さんは、仕事のため不在。
陽太さんの前には、俺とヤマ、その隣に清人さんと遥馬さんが座っているん、だが。
食事が始まっても、いつもは何かと遥馬さんの世話を焼いている清人さんの声が全く聞こえてこない。


「何があったか知らねーけどな。
清人、絶対にお前が悪いんだからさっさと謝れ」


先に食べ始めていた陽太さんは、おかしな空気の元凶を清人さんと決めつけ謝るように指示。
握り寿司をパクンと口に放り込んで、モグモグ。
「うっまぁ~」と味わいながら緑茶をすする。
この状況で食べれるなんて、凄いな。

清人さんは、ジロッと陽太さんを睨み付け、一言。


「もう何度も謝ってる」


地を這う低音デスボイスに身震い。
隣のヤマは、食欲も出ないらしく虚ろな目で座ったまま動かない。

三枝の家で聞いた、耳から溶かされる甘々ボイスを出した人間と同じとは思えないな。
こうなる予想はしていたけど、現実で機嫌が悪い清人さんと同じ部屋にいるのは自殺行為だ。
これ以上の悪化を避けるために、身動き出来ない。
寿命が縮む。
座ってから、ヤマも俺も箸に手が届かない。
煮物や焼き物、天ぷらが目の前に並んでいるのを眺めているだけだ。
何を握りましょうかと聞かれても、陽太さんのように注文する余裕なんて無い。


「どうせお前のことだ。
ご機嫌とりで、謝っただけだろ?」


陽太さんは、さらっとそれを流してまた違う握り寿司をパクンッ
後ろに控えている今夜の料理人は、真正面から清人さんを見てしまっているので真っ青だ。
陽太さんから「鯛とアワビも追加なぁ」と言われ、ブルブル手元を震わせながら握っている。

菊川物産は食品関係も手広く取り扱っているので、旬の食材がすぐに並ぶ。
いつもなら、俺も好きなネタを頼むところなんだが今日は諦めよう。
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