ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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18 運命の人

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遥馬さんとは、いつもチャットで連絡を取り合っている。
電話だと、相手が何をしているかわからない、と言うか。
万一二人の邪魔になるタイミングだったとき、清人さんが怖いからだ。

友達が変異種Ωになっていたことと、出来れば直接話をする時間を作ってもらえないか送信したら、直ぐに電話がかかってきてドキッとした。

三枝達に断って、一度玄関から外に出て通話ボタンを押す。
遥馬さんと電話で話すのは初めてだ。


『あ、もしもし、奏ちゃん?
あの、俺で良かったらその子の予定に合わせて時間を空けるよ。
あと、変異種Ωのことを研究してる先生にも会わせてあげたいっ』

『ハル、落ち着いて』


焦って早口になっている遥馬さんの声と、その後ろから彼を宥める清人さんの小さい声が聞こえてくる。
遥馬さん、三枝のことを心配してくれてわざわざ電話にしてくれたのか。
嬉しいな。

遥馬さんは、ふぅと静かに息を吐いてから『うん、ありがとう清人』と声を潜め向こう側にいる清人さんにお礼を言っているようだ。
清人さんが『大丈夫か?』とまだ心配している声が続けて聞こえてくる。

清人さんは、結婚してから以前より周りへのアタリが軽減したけれど、手に入れた遥馬さんへの過保護ぶりが無くなった訳じゃない。
遥馬さんとその他の区別はハッキリしたままだ。

その他の俺たちに見せる冷酷な一面と、遥馬さん限定の寛大で甘やかす清人さんのギャップを一年以上見てきたしな。
清人さんのデレモードには慣れたつもりだったんだが、スマホ越しに声だけ聞いてみるとまだまだだなと実感。
耳が溶けそうなくらい甘く響く声に、赤面してしまった。

『ほら、ちゃんと座って』『え、え?こっちの椅子で良いよ』『駄目だ。ハル』『ひゃあっ』
二人が話してる声が遠くで聞こえ、ガタゴト物音が続く。
なんだか騒がしいが、そろそろ俺も話して良いだろうか?
三枝達を、リビングで待たせたままなんだが・・・

タイミングを計って聞き耳をたてていたら、先ほどまでとは比べ物にならない腰が砕かれそうになる魅惑の音が響いた。


『俺の知らない場所で、電話しないで』


澄ましていた耳に、寂しいと甘えた感情が上乗せされた清人さんの声が流れ込んでくる。
うわ、これ、絶対に遥馬さん以外聞いちゃダメなレベル!
あまりの衝撃に、手からスマホがすり抜けて床に落ちた。
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