ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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「うん・・・その気持ちわかるわ。
人にあげたもんを喜ばれたら、嬉しいもん。
俺も、ご飯とかお菓子を作って、美味しいって食べて貰えたら嬉しいし。
その人らにとったら、もっともっと胸がいっぱいになるくらい嬉しいんやろか?」

「そうみたいやわ。
だからな、出来るだけあげる相手を動物で代用したりはするんやけど、相手の人生を変えてしまうって分かってても全部を止めることは出来ひんねんて。
自分があげた食べもんを、美味しそうに食べてくれる姿はずっと見てたぁなるらしい。
その相手を、番にする気持ちまで無くてもな。
好きやなぁ、可愛いなぁって思える相手の食事風景は、特別やねんて」


すんなり相手の気持ちに共感する三枝。
頼子さんは、三枝が相手を否定しないことにほっとしたんだろう。
話すスピードが戻ってきた。

だが、三枝はどこまで自分の身に起こったことだと理解しているんだろう。
キラキラした瞳は、Ω向け恋愛小説の中の番について語るように夢見勝ち。
もしかすると、頼子さんがそういった本を持っているのは、三枝がどんな風であれ、Ωになった自分を少しでも前向きに受け取れるようにだったのか?

三枝は、行き過ぎなくらい番信仰だからな。
自分が2次元のΩのように、愛し愛される存在になれるんだと捉えてしまえるのか?


「その分、貰う時には気ぃつけてな。
自分を好きやと思わへん人、自分より格上の人、三親等内の家族。
Ωにならへん例外は、この三つだけやから範囲が狭いし、特に人の気持ちなんてわからへんやん?
ちょっとでも自分に好意もってそうな人から、食べ物を受け取らへんように慎重にしてるんやて。
恋愛以外にもな、憧れでも友情でもあかんらしい」


Ωにされたことを拒否したくても、目を背ければ三枝がβに戻るわけじゃない。
変異種Ωを今もΩ堕ちと呼ぶ人間はいるし、身内からは忌み嫌われる。
もし、元に戻る方法があったなら、迫害される前に無かったことに出来るはずだからな。
萩野も、戻す方法は無いようだと言っていた。

・・・そう言えば、三枝がお菓子を作った話を聞いたことがあったな。
お菓子作りは、頼子さんが少しでも相手の気持ちを考えられるように教えていたんだろうか。

あれは確か、春休みの。

『色々訳有りで、俺の家は他人が作った食べ物については制限があってさ』

・・・気のせい、いや、記憶違いだな。
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