ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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頼子さんは、ん~と下唇を指で挟み、親指の腹で揉みながら顔をしかめて唸る。
こちら側に座る三人は、固唾を飲み続きを待つ。
ロマンチックなんて場違いな言葉が出てきたが、なんだったんだ?
聞き間違い・・・うん、聞き間違いだろう。
今目の前にいる頼子さんは、顔を強ばらせ真剣そのもの。
そんなことを言ったようには見えない。

頼子さんは、「もー、どうゆぅたらええんかなぁ」と最終的には頭を押さえ、考えあぐねていたが。


「えーとな、かなちゃん。
この子がΩになったんは、この子のせいやねん。
だから、かなちゃんの・・・」


「え、俺のせいなん?!」


紡ぎ始めた言葉は、早々に三枝の上擦った声が切ってしまった。

自分のせい、つまり、Ωになったのは自業自得だと言われたようなものだ。
俺がお前の立場でも、最後まで聞く余裕は無かっただろう。

三枝は衝撃を受けすぎたのか、薄く開いた唇から「ハハ、も、どうなってんの?」と力無い笑い声を漏らす。
力を失った身体が椅子に凭れた弾みで、キャスターが回り少し後ろに動いてしまった。
戻す気にもならないらしく、足を伸ばして脱力している。

Ωと自覚したのは、つい先程のことなのに。
実は、小学生の頃からΩで。
親は、そのことを事前に知っていて。
しかも、自分のせいだと断言されたんだからな。
立て続けに聞かされる情報は、全て支離滅裂。
無理にそのまま受け止めようとして、頭の中が空転していないといいんだが。

それにしても、三枝家は全員人が良すぎる。
どこまで俺を庇おうとするんだ。
そろそろ本当のことを話して欲しい。
有り難くて、残念で、申し訳なくて。
複雑な感情が入り交じった表情を、頼子さんと道成さんに向けていた。

すると、突然頼子さんが何か見えないものを放り投げるように、天に両手を突きだし吠えた。


「あーーー、もぅ、無理やぁ!
こんなに渡のこと心配してくれてる二人に、言っても良いところとあかんところを分けて上手く話すとか、無理ぃ~
渡も今すぐ聞きたそうやもん。
みち君、どう思う?」


隣の道成さんは、その勢いに流されることなく「良いんじゃないかなぁ」とのんびり頷いた。
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