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「あ、あんなぁ」


振り絞られた三枝の声は、固く、弱く、そしてどうしようもなく震えていた。
どれだけの恐怖と、戦っているのだろう。
左右に揺れて定まらない瞳は、涙を浮かべ、今にも崩れそうだ。
貰い泣きしそうになる。

樟葉も俺も、こんなに近くにいるのについていてやることしかできない。
少しはここにいることで、三枝の力になっているんだろうか。
もっと、三枝に何かしてやりたいのに。

緊迫した雰囲気に包まれたダイニング。
マシンガントークを止めどなく打ち出していた頼子さんも、穏やかな笑みを絶やさなかった道成さんも、固唾を飲んで見守る。
全員の目が、瞳を潤ませた三枝に集中していた。


「ぉ、ぉれぇ、俺なぁっ
お・・・ぉめ、Ωになっててん!」


三枝は、御両親の顔を最後まで見ることができず、目を閉じてなんとか言い切った。
悲鳴のような告白。
ポロポロと涙が頬を伝う。
三枝の唇から、堪え切れない嗚咽が漏れる。

こ、こんなとき、どうしたらいいんだ?!

御両親は、思いがけない告白に呆然。
三枝が、冗談や嘘で言っているわけじゃないのは理解されたんだろう。
ヘナヘナと、二人揃って椅子に腰を下ろした。
ショックが大きいせいか、すぐには言葉が出てこないようだ。


「・・・三枝君、座って?」


樟葉は立ち上がり、その席を三枝に譲る。
右手で背中を擦ったまま、三枝の手を握った左手は離さない。
三枝は、言われるがまま椅子に腰掛け、とうとう声をあげて泣き出してしまった。
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