ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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16 社宅

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三枝の母親、頼子さんから「はよ、座って!」と椅子まで引いて急かされた。
三枝は、鞄を置いて台所でお茶を用意しているので忙しそうだ。
樟葉と顔を見合わせ、お言葉に甘えて先に座ることにした。

誕生日席の三枝の父親、道成さんは、ニコニコ笑顔でテーブルの上に置かれていたお菓子を勧めてくれる。
周りに跳び跳ねているウサギの小さなぬいぐるみがついた藤の籠には、小袋サイズのお菓子が山盛り。


「これね、私が働いている工場で作ってるお菓子なんですよ」

「みち君、どうせやったら一番のオススメ食べてもらおうっ
うちもみち君も、おんなじお菓子作ってる会社に勤めててって、この辺は渡が話してる?」


道成さんの言葉を、俺の前に正面に座った頼子さんは早速引き継いで話始める。
手は、籠の中からお目当てのお菓子を探している。


「いえ、聞いてないと思います」


隣の樟葉にも目で確認したら、コクコク無言で頷いた。
前傾姿勢で、三人の話を聞き漏らすまいと必死なのが伝わってくる。
俺でさえ、話すタイミングが掴めないんだ。
樟葉なら、話についていくのも大変かもしれないな。

頼子さんは、このあと三枝がお茶を運んでくるまでのわずかな時間に二人の仕事の話をしてくれた。
勤め先は、全国に5つの工場といくつか営業所がある大手のお菓子メーカー。
頼子さんは、出産を機に仕事を辞めていたんだけど、K市の工場が稼動するときに再就職して共働きなんだそうだ。

ちなみに、この間に頼子さんの手はオススメのお菓子を見つけて俺と樟葉に小袋を開封し渡してくれていた。
チョコレートのかかったポテトチップスは、「甘じょっぱい」味が一押し。
確かに、初めて食べる味だったけれど、癖になるな。
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