ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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16 社宅

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三枝が住む社宅を目指し、萩野の運転する自動車は街中を走り抜ける。
ヤマや三枝達と旅行やデートするようになったとは言え、学校と屋敷の往復が日常だからな。
窓の外を流れる景色に見覚えはない。

車内には、今週の人気ランキング曲が順に流れていた。
気休めにラジオでも流しますかと萩野に聞かれ、俺から後ろの二人に尋ねたら三枝が頷いたからだ。
αやβの混成ユニットが今の流行りらしい。
αを偽装していたときは、流行りの曲を聴くゆとりもなかったんだが。
ヤマの番になって、三枝から昼休みや生徒会の休憩時間にイヤホンの片方を借りて一緒に聞いている内に少し詳しくなっていた。

以前はαへの憧れや賛歌が主流だったが、Ωの人権解放運動が社会に浸透する内に、Ωの視点、番についても歌われるようになった。
三枝のお勧めの曲には、きらら先生が描く小説のような甘い恋愛の応援歌が多い。

番信仰の三枝は、番を作りたいと思っているようだが。
二次元と違い、未だにΩを恋人や結婚相手と別枠に数えるαもいるからな。
番に優しいヤマや芝浦が間近に居るせいで、自分の番に夢を見過ぎないと良いのだが。

・・・三枝が、Ωか。

三枝は、βしか通えないK中学校出身。
学園までは、電車通学だったよな。
K中学校のあるK市は、政府が指定する特別実験指定都市のひとつだ。 

バース性研究のために、住居者をβに限定した場合の社会への影響力を分析している。
市長や市議会議員もβで、市の行政にもαは関わらない。
家族全員のβ出生証明書が無ければ、家を借りることも出来ない。
K市を、αやβが短時間訪れることはあっても長居は出来ないよう市内ホテルの宿泊もβに限る徹底ぶりだ。

もし三枝が、市内の高校に通い、市内で勤務していたら。
発情期が来るまでΩだとは気付かず、発情してもフェロモンレイプの心配は市外に比べて低かっただろうか。
・・・いやいや、市内の高校に通っていれば、俺と同じクラスになることもなかったんだ。
変異種Ωになることもなく、βのままいれた。

だいたい、今更たらればの仮定を考えてどうなると言うんだ。

俯いていた顔をあげ、そのまま座席に背中も頭も預ける。
しっかり、現実に対応しないと。
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