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16 社宅

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萩野は、紙袋を一旦ローテーブルの脇に置いて、三枝の背後へ回る。
三枝は、急にΩだったことが分かってから落ち着きがなく、今も匂いを確認しても良いと言っていたがどんな風にかまでは頭が回ってなかったんだろう。
萩野が後ろにいるのに、「ヒートかぁ」と考え込んでいた。

何も警戒していない三枝に、萩野は「失礼します」と一言添えてから右腕を伸ばす。
額と目を掌で覆われた三枝は、ビクッと身体を痙攣させた。
そのまま萩野の方へ軽く引かれ、身体が後ろに傾くと。
「ひえ"ぇ"~」と震えた声が口から漏れた。


「大丈夫ですよ、三枝様。
匂いを確認するだけですから」


萩野は、三枝の耳元でわざと囁くように優しく語りかける。
緊張させたり、怖がらせないために視界を奪ったんじゃなかったのか?
三枝は、みるみるうちに身体を真っ赤に染め、両膝に握り拳を置いてガチガチに身体を硬直させてしまった。


「萩野」


三枝を、故意にからかっているのか?

お前にとっては、俺の警護のついでに三枝も含まれただけで。
三枝がΩだろうが、どうでも良いことなんだろうが。
俺が原因かも知れないんだぞ!

睨みつけると、萩野は口角を上げたまま三枝の首筋に顔を近づけ匂いを確認。
隣でその様子を見ていた樟葉が、「はわわぁっ」と口許を押さえ、三枝に負けないくらい真っ赤な顔でおかしな声を上げ。


「え、え、なに、なに、みこちゃん?
俺、どうなってんの??」


目隠しされた三枝の不安を更に煽っていた。
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