ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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萩野は、気配を殺していない自分が注目されることには慣れているからな。
歩けば歩くだけ視線が集まってきても、全く気にとめない。

目があった社員には、俺から見れば愛想笑いを浮かべその前を通り過ぎる。
だが、微笑まれたと勘違いした社員は、一様に頬を染めて出かかった声を殺して興奮を隠せない。
その脇を後から通るのは、どうも目のやり場に困る。
凝視するわけにもいかないが、無視するには異様だ。
熱気が怖い。

萩野は、桜宮財閥グループの出世コースに乗った五枚花。
左手に指輪が無いから独身じゃないかと、囁く声も聞こえてくる。
表の仕事に携わらないことも手伝い、萩野の存在はグループの中で噂には上がるが実際見る機会は少ない。

希少な社員の出現に、浮わついてしまう気持ちはわからなくもないが。
仕事をしろ、仕事をっ

うっかり萩野の進路に立っていた患者は、すれ違った後もわざわざ振り返って確認しているぞ。
芸能人と間違われてるんじゃないのか?

こうして一緒に歩いているだけで、確かに萩野はヤマとはまた種類が違う優生αなんだと実感するが。
なにせ、過去が過去だし、俺の教育係兼ボディーガードになってからも底知れない実力を見てきたからな。
萩野が、気配を殺さず普通にしてみせると・・・なんだろう、モヤモヤしてくる。
それがむしろ当たり前なんだが。
違和感がありすぎる。

萩野は俺達を固定ベンチに座らせると、受付で事務員と言葉を交わしてすぐに戻ってきた。


「三枝様、旅行中に樟葉様と芝浦様が光って見えたんですよね?」

「え、はい」


正面で片膝を折って尋ねられ、三枝はドギマギ。
顔を真っ赤にして頷いた。
α男性相手にこの反応をするなんて、告白された桂木にもそのうち惚れてしまう日が来るんじゃないか?
危機管理と繰り返し注意しても、三枝は桂木と二人で帰ったり休日に会ったり・・・
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