ヘタレαにつかまりまして ２

12 修学旅行 side 陸

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稲葉にとっては、俺のフェロモンから伝わる能力は予想外の強さだったらしい。
部屋中に満ちた、殺気まみれの俺のフェロモンに、骨の髄まで誘惑しようとまとわりついてきた稲葉のフェロモンは跡形もなく消え去る。

菊川の下にいる俺の実力を、見誤るαは多いからな。
菊川は、出し惜しみしてるわけじゃないんだろうが、本人も恐らく把握しきれていない未知数の力はあっても、本気でやりあったことがない。
格付けで相手を直接叩きのめしてきた俺とでは、実践経験の数が違いすぎる。
本気でやりあえば、かなちゃんを得るまでの菊川になら楽勝。
今でも、五分五分、条件次第で勝てんじゃねぇかな？

けど、菊川には別の良さがあるからな。
俺のような、特殊な問題を抱えたαでも群れにいれてしまう度量の深さ。
一般的なαにありがちな自己顕示欲もなく、調和と共同が身に染み付いている。
そこが、底知れない力があるくせにアンバランスで面白いとこだ。

菊川の威圧フェロモンは、相手の降服を促す。
俺のは、そんな余白を一切含まない。
降服より屈伏させること前提で相手に襲い掛かる。